こんにちは。わいんとくすりです。
今回はイタリア・カンパーニャ州のワインTaurasi(以下、タウラージ)をテイスティングしていきます。タウラジは土着品種のアリアニコから造られるパワフルなワインとして有名です。
造り手はタウラージの名手Mastroberardino(マストロベラルディーノ)、そのエントリーレンジであるRADICI(ラディーチ)をみていきます。
この記事はこんな人にオススメ
この記事でわかること
DOCG タウラージの特徴
RADICI TAURASI 2018 について
DOCG規定、生産者や栽培・醸造、実際のテイスティングをみていきましょう。
原産地呼称
タウラージはカンパーニャ州を代表するDOCGです。南のバローロとも呼ばれるほど、長期熟成能力を有しています。
生産地域はタウラージをはじめとするアッヴェリーノ県に含まれる17地域が指定されています。
使用されるブドウ品種は南イタリアを代表する黒ブドウであるAglianico(アリアニコ)、これを85%以上使用することが義務付けられています。
タウラージDOCGの熟成規定は3年、そのうち少なくとも12カ月間は樽熟成が必要になります。当然ですが、タウラージ Reservaはさらに長い熟成規定が設けられています。
タウラージの特徴をDISCIPLINARE DI PRODUZIONE DEI VINI A DOCG“TAURASI”で確認してみると以下のようになります。
- 色調:鮮烈なルビーからガーネットにかけた色調、熟成するとオレンジを帯びてくる
- 香り:多かれ少なかれ強く特徴的なエーテルの香りを持つ
- 味わい:辛口でコクがあり、調和がとれている。後味は持続的
生産者

マストロベラルディーノはイタリア、カンパーニャ州を代表するワイナリーで、アンジェロ・マストロベラルディーノ氏によって1878年、アヴェリーノに設立されました。
イタリア統一運動に貢献したイタリア王冠勲章騎士(カヴァリエーレ)でもあるアンジェロ氏はヨーロッパへの自社ワインの輸出を始めます。
息子であるミケーレ・マストロベラルディーノは世界中に旅をしながら自社ワインを宣伝することで北米やアメリカへの販路を広げていきます。
ミケーレの息子であるアントニオがワイナリーを継ぎ、古くからカンパーニャ州に根付く品種であるアリアニコ、グレーコ、フィアーノ、ファランギーナ、ピエディロッソ、コーダ ディ ヴォルペなどの品種の保護と価値向上に注力しています。
現在のマストロベラルディーノ社は南イタリアの高品質ワイン造りのトップとしても称されており、国内外からも高い評価を受けています。
現在の代表であるピエロ氏は大学の経営管理学の教授であり、経営に関する書籍も数多く出版されています。また、小説や詩、デッサンなど芸術的なセンスも持ち合わせており、2011年以降にも詩集や小説を出版し、個展なども開催されているようです。
基本情報

ワインは生産者や栽培環境、醸造過程といった背景も知ることで、より興味深く味わうことができます。この点にも目を向けてみていきましょう。
栽培
TASURASIのブドウはDOCG認定の最南端に位置するモンテマラーノの畑で収穫が行われています。
モンテマラーノの畑は気温の変化が大きく熟成が遅いため、収穫はほぼ 11 月と遅くなります。その分、良質なタンニンと酸味に富んだブドウが生産されます。その魅力を十分に引き出すには長い時間が必要とされています。
モンテマラーノの栽培面積は17ha、土壌構成は粘土と石灰質で水捌けは良好です。植密度は4000本/haと低く、栽培はcordone speronato。傾斜は南東で良好な日当たりを確保し、海抜500〜650mに位置しています。
醸造
手作業によって収穫されたブドウは速やかに醸造所へ運び込まれます。
破砕されたブドウは22〜24度に温度管理されたステンレスタンクにて果皮と共に約25日間浸漬されます。その間にアルコール発酵、マロラクティック発酵が進行します。熟成はバリックで24ヶ月(新樽比率20%)。その後も12ヶ月以上の瓶内熟成が行われます。
下記が基本情報です。
ヴィンテージ情報
TAURASI 2018のヴィンテージに関する情報は残念ながらホームページなどの記載は見当たりませんでした。他の生産者に関しても同様です。
評価サイトでの情報ベースでは、WINE ADVOCATESで91点、WINE searcherでも93点と高い評価を得ています。WINE ADOVOCATESでは実際にMastroberardino RADICI TAURASI 2018がテイスティングリストに記載されており、品質の高さがわかります。
実際にテイスティングをしてみて

外観
エッジはややレンガがかっていますが、そこまで熟成の印象は強くありません。中心部の色合いは濃いめのルビー。粘性はやや強く、涙はややじっとり。外観からは少しの熟成感と凝縮した印象を受けます。

外観はやや熟成感があり、成熟度の高さが伺えます。
香り
温度が低めだと梅のような酸っぱい香りを主に感じ、果実味は控えめ。少し閉じています。
温度が上がってくると酸っぱい印象が抜け、徐々に開いてきました。隠れていたヴァニラや赤系果実の香りが前面に出てきます。加えて、お花や甘草のようなスパイス、コーヒーっぽさも感じられます。
3日間に分けていただきましたが、劣化した印象はなく、長く楽しむことができました。
果実と木樽からくる印象が主体。熟成した印象は香りからはあまり感じませんでした。
味わい
中心にあるのはしっかりとした果実と樽・アルコールからくる甘味。口の中をキュッとさせる力強いタンニンに、後から来るシャープな酸味が全体を引き締めます。甘味、タンニン、酸のバランスがとてもよく、全てが調和しているイメージ。
甘やかな香りが口の中に残ります。余韻はやや長め。
飲む時の温度帯はタンニンがしっかりとしているので18〜20度が良かったです。
成熟度が高く、複数の要素が調和したとてもバランスの良いワインに仕上がっています。
飲み頃
果実の印象はまだまだしっかりと感じられ、タンニンと酸も十分保たれている印象です。今飲んでも十分美味しいですが、これからの熟成も期待できます。
ちょうど飲み頃にさしかかっているタイミングです。
まとめ
いかがでしたか?今回はRADICI TAURASI 2018のテイスティングレポートをお届けしました。
当たり前ではありますが、RADICI TAURASI 2018は外観、香り、味わいそれぞれがDOCGの規定をそのまま体感することのできるワインに仕上がっていました。規定を見ながら飲んでみると、なるほどと思いながら楽しむことができました。
現行のヴィンテージは2019になります。お手に取ってもらえたら嬉しいです。
ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

薬剤師/2023ワインエキスパート/イタリアワイン好き/寅年
とあるワインバーでワインのセミナーを聞き、ワインを学習の対象として見るようになりました。さらに体系的な勉強がしたいと思い、2022年にワイン検定ブロンズ、シルバー、2023年にJSAワインエキスパートを取得。このブログでは試験で得られないイタリアワインの面白さをお届けしていきます。
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