こんにちは。わいんとくすりです。
今回はトスカーナ州唯一の白ワインのDOCG、Vernaccia di San Gimignano(ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ)です。
過去には王侯貴族や教皇にも愛飲されていた歴史あるワイン、その味わいはいかに!?
気になる方は要チェック!早速みていきましょう。
この記事はこんな人にオススメ
この記事でわかること
ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノの特徴
結論からいってしまうと、ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノは、複雑さを持った味わい深いワインでした。
そう思わせる理由はなんなのか?生産者や栽培・醸造、実際のテイスティングについて見ていきましょう。
ワインに入る前に
ブドウ品種
ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノはトスカーナを代表する白ブドウ品種です。
房は大きめで、長いピラミッド型。果粒の大きさ、果皮の厚さは中程度。外観は黄色がかった緑色ですが、陽が強くあたったところは琥珀色も見られます。収穫は9月下旬~10月はじめ頃。
ヴェルナッチャとは「その土地固有の」という意味を持ち、サン・ジミニャーノで昔から作られているブドウを指しています。
似た名称のサルデーニャ州の酒精強化ワインで用いられる「ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノ」やマルケ州の「ヴェルナッチャ・ネーラ」がありますが、ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノとの関係はないようです。
原産地呼称:DOCG Vernaccia di San Gimignano

原産地呼称の記事についてはこちらをご覧ください。
トスカーナ州、シエナ県にあるサン・ジミミャーノの丘陵地帯にあるブドウ園が認定地域です。ちょうどフィレンツェとシエナの間、トスカーナ州の中心部に位置しています。
「塔の街」としても知られるサン・ジミニャーノは写真からもわかるように、今もなお中世の趣きが残る人気の観光名所でもあります。
DOCG ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノは1966年にイタリアで初めてDOCに認定され、1993年にDOCGへと昇格しました。
お酒としての歴史は1276年にまで遡り、当時の王侯貴族、教皇に愛飲されていたことや、13世紀〜14世紀にかけて活躍したイタリアの詩人・政治家ダンテの『神曲』やボッカチオの『デカメロン』にも名を残していることからも、その品質の高さが伺うことが出来ます。。
使用される品種はヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノを85%以上。他の品種もブレンドが可能ですが、アロマティック系ブドウ品種(トラミネール、モスカート ビアンコ、ミュラー トゥルガウ等)の使用は禁止です。ソーヴィニヨンとリースリングに限り10%まで使用が可能となります。
Riservaには14カ月の熟成規定が設けられており、内11カ月は木樽またはタンク内とされています。
DOCG ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノの味わいは以下の通りです。
残糖最大4.0g/L、最低総酸度4.5g/L、最低アルコール度数は11.5%、Riservaは12.5%です。
生産者について

Il Colombaio di Santa Chiara(イル・コロンバイオ・サンタ・キアーラ)は比較的新しいワイナリーで、現オーナーのアレッシオ氏がフィレンツェ大学でワイン醸造学を学んだ後、2002年にワイナリーは設立されました。
3兄弟の末っ子であるアレッシオ氏ですが、父のマリオ氏、兄のジャンピエロ氏とステファノ氏と共にワイン造りを行っています。
イタリア国内での評価も高く、ガンベロロッソでは毎年最高評価を授与される白ワインの造り手です。
基本情報~栽培・醸造~
ワインは生産者や栽培環境、醸造過程といった背景も知ることで、より興味深く味わうことができます。この点にも目を向けてみていきましょう。
栽培
ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノが栽培されるサン・ドンナートの畑は標高250~350mに位置し、小石や砂利を含む粘土質土壌。日当たりのよい南向きの丘陵地帯です。
ブドウ樹はコルドン仕立て、植密度は5000本/haになります。収穫は9月30日から手作業で行われます。
醸造
除梗、破砕されたブドウは果皮と共に浸漬後ソフトプレス。アルコール発酵は温度管理されたコンクリートタンクまたはステンレスタンクにて実施。ワインはボトル詰めまで澱と接触しています。
下記が基本情報です。
トスカーナ 2020 ヴィンテージ情報
トスカーナ州の2020年は霜害による被害があり、全体的に生産量を落としてしまいました。
ワインの品質はというと、暑い夏を反映した肉厚で熟した果実の印象が特徴的な仕上がりのワインと評価されています。
トスカーナのより詳しいヴィンテージ情報はこちらをご確認ください。
実際にテイスティングをしてみて

外観
輝きのあるグリーンかがったレモンイエロー。色調はやや淡めの印象です。涙はじっとりとながれおち、粘性は中程度〜やや高め。

外観からは、若々しさと共に、ブドウの成熟度の高さが伺えます。
香り
抜栓直後から香りは開いており、フレッシュなリンゴや洋梨、黄桃、少しパッションフルーツやパイナップルを思わせる南国系果実も連想されます。そこに白い花、フレッシュなハーブ、スーッと抜けるミネラルの印象も感じられます。スパイスも含まれており、コリアンダーや白胡椒も感じることが出来ました。
シュール・リーの期間もありますが、私は酵母の印象を感じ取ることが出来ませんでした。
香りの印象としては、澱の印象は感じられませんでしたが、驚くほど複雑な香りを感じることが出来ました。
味わい
アタックはしっかりとしており、果実の凝縮感が先行。アルコール感は良い意味で感じられません。
前半に舌先を刺激するミネラルのピシピシとした印象。このミネラルによって酸は比較的丸く、軽やかに感じますが、後半に向かってしっかりと伸びていきます。
アフターにかけて出てくる苦味はしっかりと旨みを感じることが出来ます。香りでは感じることがなかった澱の印象かな?と思いました。
おすすめの温度帯は10度程度からスタートして、少しずつ温度を上げていくのが良いかと思います。温度低めはレモン感強め、温度が上がるにつれて香りが広がり、豊満さが存分に発揮されると思います。
全体のバランスとして厚みがあり、酸とミネラル、苦味のバランスが非常に心地良かったです。
飲み頃
ミネラル、酸もしっかりと感じられることからある程度の熟成には耐えることができる印象です。5年程度は十分熟成に耐えることができるのではないでしょうか。
今飲んでも十分美味しいワインになっているので、あまり熟成については考えなくても良いかもしれません。
たまたま「ちょい熟」のワインがあれば購入してみるのも面白そうです。
熟成の可能性はなくはないが、購入したタイミングで飲んでみることをお勧めします。
ぺアリング
今回合わせたのはレモンクリームソースのパスタです。
意識した点はワインにあるものでリンクさせる、という点です。ワインにある果実感はクリームの重さと、アフターの苦味はレモンのビターな印象と繋がると考えました。

パスタは2人前に対してレモンを1つ使用。程よいレモン感がクリームソースに溶け込みます。これを支えるパスタはマンチーニ社の2.4mm。重みのあるパスタソースをしっかりとしたパスタが支えます。
旨みはパンチェッタとパルミジャーノ・レッジャーノが担当。
ワインとの相性は狙い通り。パスタソースとワインの重さは強すぎす、弱すぎずな印象になりました。口の中に広がすレモンがワインと繋がります。クリーム系のコッテリとしたパスタですが、ワインの酸が際立ち、口の中をスッキリと洗い流してくれました。
まとめ
いかがでしたか?今回はヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノのテイクティングレポートをお届けしました。
ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノは見た目とは裏腹に複雑な香りが広がっており、やや大ぶりのグラスでも十分楽しめそうです。味わいもしっかりとしており、しっかりとしたミネラル、伸びのある酸味、アフターの苦味がとても特徴的なワインでした。
よろしければ、あなたも一度トライしてみてください。
ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

薬剤師/2023ワインエキスパート/イタリアワイン好き/寅年
とあるワインバーでワインのセミナーを聞き、ワインを学習の対象として見るようになりました。さらに体系的な勉強がしたいと思い、2022年にワイン検定ブロンズ、シルバー、2023年にJSAワインエキスパートを取得。このブログでは試験で得られないイタリアワインの面白さをお届けしていきます。
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