みなさん、こんにちは。ワインとくすりです。
今日はイタリア、トスカーナ州のワイン、Vino Nobile di Montepluciano(ヴィーノ・ノビーレ・ディ・モンテプルチアーノ)に誕生した新しい規定「Pieve(ピエーヴェ)」についてです。
2021年に誕生した規定で、発売されるのは2025年から!
気になる人は要チェック。早速みていきましょう。
この記事はこんな人にオススメ
この記事でわかること
ヴィーノ・ノビーレ・ディ・モンテプルチアーノの新規定「Pieve」について
結論からいってしまうと、ピエーヴェはワインと生産地の結びつきをより具体的に表現した制度です。生産者にはモチベーションの向上に、消費者にはわかりやすさを与えてくれます。
Vino Nobile di Montepluciano概論

ヴィーノ・ノビーレ・ディ・モンテプルチアーノはイタリア、トスカーナ州シエナ県にある隠れた銘酒です。1981年にDOCGに認定されており、歴史も古く、高い名声を誇っていました。
トスカーナといえば、キャンティ・クラシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、サッシカイアを代表するスーパータスカンがあまりにも有名なため、知らないという方もおられますが、歴史的に見てもその品質は疑う余地はありません。
品種はサンジョヴェーゼ(別名:プルニョーロ・ジェンティーレ)を70%以上使用することが条件です。残りの30%は白ブドウや国際品種を含め、85種類が仕様書には記載さています。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノよりも山側に位置しており、標高が高く、酸の効いたエレガントな仕上がりになります。昨今の温暖化の影響により果実の充実度が上がり、ワインに恩恵をもたらした生産地とも言われています。
Pieveとは?

ここからが本題です。ピエーヴェとは一体なんなのでしょうか?
ピエーヴェとは既存の名称であるヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノとヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ・リゼルヴァに加えて、新しく誕生したカテゴリーです。
つまりは、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ・リゼルヴァの上位カテゴリーが誕生したということです。
ヴィーノ・ノビーレ・ディ・モンテプルチアーノ協会は気候・地質学によって特徴付けられるサブゾーンを特定するため、長期にわたるゾーニングプロジェクトを推進しました。その結果、12のサブゾーンが認定されたのです。
このサブゾーン、元来は地方教会と地域行政単位を兼ねたものであり、モンテプルチアーノ地方の独自性の象徴とされています。もちろん、サブゾーンごとに土壌や気候も異なり、その特徴がワインに反映されています。
今回新設されたピエーヴェのカテゴリーは、こうした地理的な違いを消費者に明示することで、それぞれの産地の個性や繊細な味わいの違いを楽しめるようになったということです。
厳格な生産基準とともに、ピエーヴェごとに特徴的なワインが生まれることは、モンテプルチアーノ地区全体の評価を高め、従来以上に高い品質基準や産地のブランド力の強化へとつながる取り組みといえます。
Pieveの醸造規定
これまでの規定とどのような違いがあるのかを確認していきます。
ピエーヴェを表記するワインは当たり前ではありますが、指定地区内で栽培されたブドウを使用しなければなりません。加えて、樹齢は15年以上であること、という縛りもあります。
収穫量は1ヘクタールあたり7トンまで。通常は8トンなので、収量制限も厳しくなります。
主要なブドウ品種はサンジョヴェーゼですが、使用割合が85%に引き上げられています。残りの15%はカナイオーロ・ネロ、チリエージョロ・ネロ、マンモロ・ネロ、コロリーノ・ネロといずれも土着品種の使用が可能です。
使用可能なブドウ品種が土着品種のみと規定されたことにより、より地域のテロワールを表現したワインが期待されます。
最低熟成期間は収穫翌年の1月1日から36ヶ月間。そのうち12ヶ月間は木樽で熟成、12ヶ月間は瓶内熟成をさせる必要があります。最低アルコール度数は13%です。
ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノは熟成期間が24ヶ月、そのうち12ヶ月は樽熟成、アルコール度数が12.5%。リゼルヴァだと熟成期間が36ヶ月、そのうち12ヶ月樽熟成、6ヶ月瓶内熟成、アルコール度数が13%以上となっています。
このように考えると、キャンティ・クラシコ・グランセレツィオーネと同様に、より土着品種にこだわり、その土地に根差した表現をしていくという強い意志がが感じられます。
認定された12のサブゾーン

ここからは実際のサブゾーンについてみていきましょう。
Acianello(アシアネッロ)
モンテプルチアーノの北部にある生産地域で、フォッローニカ山の麓に位置し、サラルコ川が流れています。この地理的な利点がワインに好影響を与えます。
主要な土壌は粒子の細かい砂を基盤としたシルト粘土質土壌。密に敷き詰められた砂の上にあるシルト質の土壌は粘土質土壌としての作用も併せ持っています。
Badia(バディア)
アシアネッロの北西に隣接する生産地域。バディアという名前は、ベネディクト会の古代修道院の名前に由来しているようです。
土壌の粒子は細かく、斜面にはシルト〜粘土質、土壌構成は石灰質土壌です。キアーナ渓谷に近づくと谷底に向かって小さな珪質の砂利を含んでおり、粘土質ローム/粘土砂質ロームの質感へと変化しています。これらは非石灰質からわずかに石灰質の土壌になっています。
Caggiole(カッジョーレ)
アシアネッロの南部に隣接する生産地域。地域的にはモンテプルチアーノの北部になります。
基本の土壌構成は表土は砂質ローム層の石灰質土壌、下部は砂質の堆積物、粘土ローム質の茶色い土壌が見られます。こちらも石灰質を主体とする土壌です。
Cerliana(セルリアナ)
カッジョーレの東部に隣接する生産地域。サン・ミケーレ協会にちなんで名付けられた名称のようです。
砂質は粘土からシルト質、砂質も含む粘土ローム層を持つ石灰質土壌。平地では珪質の小石を含む粘土と砂を含み、非石灰〜わずかに石灰の土壌。サルチェート川とチャリアーナ川の沖積台地がさらに変化を与えています。
Cervognano(チェルボニャーノ)
セルリアナの東部に位置する生産地域。
丘陵部には密集した砂の上にあるシルト質、粘土〜シルト質ローム層の質感を持つ、石灰質土壌。サルチェート川とチャリアーナ川を下った先にある平地は沖積み堆積土壌であり、小さな珪質の砂利を含む粘土と砂質の土壌。砂〜粘土のローム層の非石灰質〜わずかな石灰質の土壌。
Gracciano(グラチアーノ)
セルリアナの北部に位置する生産地域。サン・エジディオ教区が指定される。
主に河川湖の段球上及び沖積土壌により発達した土壌構成が特徴。小さな珪質の小石を含む砂、粘土質〜砂質のローム層。非石灰質〜わずかな石灰質の土壌構成。
Le Grazie(レ・グラジエ)
アシアネッロの南側、カッジョーレの西側に位置する生産地域。ここも北部エリアとされています。
表土は砂質で構成される堆積物で、ときにシルト質が多くなります。シルト〜粘土質のローム層が多く、土壌の粒子は細かい石灰質土壌。南部はサラルコ川の沖積土壌が特徴とされる。
San Biagio(サン・ビアージョ)
ピアーヴェ内で最も西に位置する生産地域。
北側の生産地域では砂質ローム層で石灰質土壌。より起伏のある斜面では粘土〜シルト質の土壌が見られ、こちらも石灰質土壌となります。
Sant’Albino(サンタルビーノ)
最も南に位置する生産地域で、洞窟のような峡谷に位置する。
東に向かって広がる谷が特徴で、エリア上部は砂質の土壌、多くの場合は砂質ローム層の石灰質土壌。特徴的な土壌として、主にサンタルビーノ村周辺で見られる赤褐色の砂が挙げられる。南部の生産地域では砂質粘土、シルトを含む粘土質の石灰質土壌が広がる。
Sant’Ilario(サンティラリオ)
聖イラリオに捧げられた教会区で、モンテプルチアーノの南東側に位置する生産地域。
密集した砂とシルト質で特徴づけられる石灰質土壌。南部にあるキアーナ渓谷に近づくと河川湖畔の段丘がみられ、小さな小石を含む粘土質〜粘土砂質ローム層で、非石灰質からわずかに石灰質の土壌となる。
Valardegna(ヴァラルデーニャ)
モンテプルチアーノのほぼ中央に位置する生産地域。
堆積物は粗い砂とレンズ状の砂利で構成されており、ユニットの上部では、砂の上の土壌は砂質ローム質の質感を持ち、骨格がなく、石灰質土壌です。ユニットの形態的に最も低い部分、緩やかな凸型斜面では、土壌はより粘土質になり、シルト質粘土質ロームからシルト質粘土質の範囲の質で骨格はありません。それらは石灰質の土壌です。
Valiano(ヴァリアーノ)
最東部に位置する生産地域で、他の生産地域からやや離れた位置にあります。
キアーナ渓谷の東側に位置し、河川湖とその周辺の丘陵地帯が特徴的な微気候を生み出す。堆積物は炭酸カルシウムを多く含むヘーゼルナッツの色味をした砂質土壌が特徴。シルト粘土質で、わずかな石灰質土壌。
まとめ
いかがでしたか?今回はヴィーノ・ノビーレ・ディ・モンテプルチアーノの新カテゴリー、「ピエーヴェ」について解説しました。
生産地域をより細分化することで、消費者にはわかりやすさを、生産者には生産意欲の向上を見込むことが出来ます。地域活性化にも繋がる取り組みになっています。
イタリアワインの多様性に触れたい愛好家や、サブゾーンごとの変化を深く味わいたい人にとって、ヴィーノ・ノビーレ・ディ・モンテプルチアーノ・ピエーヴェは新しい発見と体験の場を提供するカテゴリーになってきそうです。
通常のヴィーノ・ノビーレ・ディ・モンテプルチアーノに比べると値段は張るかもしれませんが、これからの評価が期待される生産地域でもあるので、今のうちに試してみるのも良いかもしれませんね。
ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

薬剤師/2023ワインエキスパート/イタリアワイン好き/寅年
とあるワインバーでワインのセミナーを聞き、ワインを学習の対象として見るようになりました。さらに体系的な勉強がしたいと思い、2022年にワイン検定ブロンズ、シルバー、2023年にJSAワインエキスパートを取得。このブログでは試験で得られないイタリアワインの面白さをお届けしていきます。
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