ドイツ人顔負けの几帳面!?〜トレンティーノ・アルト・アディジェ州〜

生産地域

こんにちは。わいんとくすりです。

前回に引き続きイタリアのワイン産地を巡っていきます。今回は北東部に位置するトレンティーノ・アルト・アディジェ州です。

トレンティーノ・アルト・アディジェ州は歴史的に少しややこしい地域です。もともとオーストリア、ハプスブルグ領であったアルト・アディジェがトレンティーノと共にイタリア王国領となった経緯があります。

その名残から今現在も北側のアルト・アディジェ地方ではドイツ語とイタリア語が公用語として認められています。陽気なイメージのあるイタリア人ですが、非常にドイツ人的な面もあり、勤勉で几帳面な性格です。その性格からか、ワインも繊細でデリケートなものが目立ちます。

そんなトレンティーノ・アルト・アディジェ州のお料理とワインについてみていきたいと思います。

今回の記事を読んでいただければ、トレンティーノ・アルト・アディジェ州の理解が深まると共に、郷土料理やD.O.P.ワインについての理解も進むと思います。是非ご一読ください。

お断りになりますが、総論の記事ですので、個別のD.O.C.G.やD.O.C.の詳細な記述については避けさていただきます。今後詳しくみていこうと考えていますので、今回はご容赦願います。

ドイツ人顔負けの几帳面!?〜トレンティーノ・アルト・アディジェ州〜

トレンティーノ・アルト・アディジェ州概論

イタリアで最も北に位置するトレンティーノ・アルト・アディジェ州は北にオーストリア、スイスと国境を接し、西はロンバルディア州、東はヴェネト州に接しています。

州の中央にはアディジェ川が流れ、その両側にはドロミーティ山塊が連なります。

北のボルツァーノ県がドイツ語圏のアルト・アディジェ地方、南のトレント県がイタリア語圏のトレンティーノ地方です。両県とも自治県で幅広い権限を認められています。

アルト・アディジェ側では、公用語としてドイツ語も認められているため、道路標識やワインのラベルなどイタリア語とドイツ語が併記されています。

主要な都市はアルト・アディジェ側にあるボルツァーノ、トレンティーノ側は州都でもあるトレント。歴史的な背景からも、アルト・アディジェ地方の人たちは州都がトレントであることをよく思っていない人もいるようですが…。

気候風土

気候風土をみていきましょう。

南北に連なるドロミーティ山塊は3000mを超える峰々が続き、州のほとんどが山岳地帯です。それに加えて、土地の70%以上が森林なので、耕作可能な土地はかなり制限されます。

ブドウ畑はアディジェ川両岸に広がり、標高200〜1300mに位置しています。それぞれの標高に適したブドウ品種を選択し、栽培されています。土壌はドロミーティの丘陵部は石灰質の苦灰岩土壌でミネラル感の豊富なワインが造られます。アディジェ川沿いは沖積土壌、氷堆石土壌です。

南部のトレント側はガルダ湖があるため、温暖な亜地中海性気候、アディジェ川上流域はアルプス気候〜大陸性気候、中流域になると亜大陸性気候になり、雨が少なくなります。

トレンティーノ・アルト・アディジェ州の料理

トレンティーノ・アルト・アディジェ州の食材や料理をみていきましょう。

アルト・アディジェ地方は山間部で作られる数少ない果物として、りんごがあります。このりんごはD.O.P.にも登録されており、イタリア総生産量の60%を占める一大産業です。

このりんごを使った料理が「ストゥルーデル」です。料理というよりもお菓子ですね。

ストゥルーデルはりんごを使ったオーストリアの伝統菓子として有名ですが、この地方はもともとオーストリア・ハンガリー帝国領であったこともあり、古くより作られています。

お菓子のみならず、中の具材をりんご、豚肉、チーズ、松の実、ライ麦のパン粉に変えることでメイン料理とした「肉のストゥルーデル」も存在します。

もう一つは団子状にしたパンをスープに浮かせた「カネデルリ」という料理です。お団子の材料はとてもシンプルで、パン、卵、牛乳のみでしたが、食べる場所や季節によってはレバーやほうれん草、ビーツなども練り込まれます。

こういった料理は固くなってしまったパンを食べやすくするために生まれました。カトリックの人々にとってパンはキリストの肉であり、聖なるものです。無駄にすることなどないということですね。

トレンティーノ・アルト・アディジェ州の名産と言えば、燻煙をかけた特徴的な加工肉「スペック・デッラルト・アディジェ(以下、スペック)」I.G.P.も外せません。

スペックはドイツ語で豚などの脂身やベーコンを意味します。I.G.P.に認定されているものは骨を抜いた豚モモ肉を整形し、塩、砂糖、スパイス類で漬け込んだ後、燻製にして熟成させたものです。日本でよく見かける生ハム(プロシュート)は塩のみで漬け込まれています。

トレンティーノ・アルト・アディジェ州のワイン

アルト・アディジェ地方はイタリアを代表する白ワインの産地です。南部のトレンティーノ地方はスパークリングワインの成長が著しい産地です。

品種はシャルドネなどの国際品種も栽培されますが、土着品種やケルナーやシルヴァーナなどドイツ系の品種も栽培されています。

南北ともに優秀な生産者協同組合があり、質の高い安定したワインの生産が行われています。ワイン生産割合は、白ワインが73%を占めており、主に白ワインの産地です。

主なブドウ品種

白ブドウ

Traminer Aromatico(トラミネール・アロマティコ):

バラ、ライチ、トロピカルフルーツといった特徴的な香りを持つ品種。糖度が上がりやすいため、味わいは柔らかく、アルコール度数が上がりやすい。フランスのアルザス地方やドイツで有名なゲヴュルツトラミネールと同じ品種です。

Nosiola(ノジオーラ):

主にトレンティーノ地方で栽培されている珍しい土着品種。軽快でフレッシュな白ワインとなるが、陰干しで作られる甘口(Vino Santo:ヴィンサント)も滋味深い味わいを有する。

黒ブドウ

Schiava(スキアーヴァ):

明るめのルビー色で、エレガントなワインを生む品種。第一次世界大戦までは幅広く栽培されていたが、現在は減少傾向。主な産地はアルト・アディジェ地方ですが、ロンバルディア州ヴェネト州でも一部栽培されます。

Lagrein(ラグレイン):

色が濃く、濃厚な果実味を持ち、スパイシーで力強いワインを生む品種。アルト・アディジェ地方のボルツァーノ周辺で主に栽培されます。現地ではラグラインと発音されるようです。

Teroldego(テロルデゴ):

濃いめの色調と果実味ですが、しっかりとした酸味が感じられる品種。見た目よりも渋みは穏やか。トレンティーノ地方のロタリアーノ平野産が有名です。

主なD.O.P.

それではワインの銘柄についてみていきます。

Alto Adige(アルト・アディジェ)/Sudtirol(ジュードティロール):

ドイツ語表記もあるのがアルト・アディジェ地方らしいですよね。幅広いブドウ品種、ワインのタイプが認められています。

白ワインが秀逸で、ドイツ系品種のミュラー・トゥルガウ、シルヴァーナ、ケルナーなどが繊細でエレガントな仕上がりです。熟成向きのシャルドネやピノ・ビアンコにも完成度が高いものが目立ちます。

赤ワインはSchiavaやLagreinといった固有品種の他にボルドー系品種(カベルネ・ソービニョンなど)の栽培も盛んで、魅力的なワインが造られています。

Trentino(トレンティーノ):

南部のトレンティーノ地方を広く包括するD.O.C.です。品種も多数認められています。首都のトレント北東のチェンブラ渓谷ではミュラー・トゥルガウやNosiolaからこの地方ならではの白ワインが造られます。

赤ワインでは土着品種であるマルツェミーノからフレッシュで軽やか、かつ繊細なワインを生みます。マルツェミーノの赤ワインはモーツアルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」のアリアでも有名です。

Trento(トレント):

ロンバルディア州のフランチャコルタと並び、イタリアを代表する瓶内二次発酵方式のスパークリングワインの銘柄。標高の高い畑から収穫されたブドウを使用し、ミネラル中心のフレッシュさを保持したスパークリングワインが造られます。

Teroldego Rotaliano(テロルデゴ・ロタリアーノ):

トレント市の北にあるロタリアーノ平野で栽培されるTeroldegoから造られるワイン。ロゼまたは赤ワインのみが認められています。果実味に富んだ滑らかさが特徴的。一時注目を浴びてブームになりましたが、現在は専ら地元消費が中心です。

まとめ

いかがでしたか?トレンティーノ・アルト・アディジェ州の料理とワインについて記載してみました。

まとめてみますと、

・州の多くは山岳地帯。標高の高い場所でブドウ栽培は行われます。気候帯は高山気候から地中海性気候と幅広い。

・特産のりんごを使った料理やお菓子、スパイスや燻香が印象的な加工肉「スペック」で有名。

・土着品種以外にも、ドイツ系品種が多く栽培されており、秀逸な白ワイン、スパークリングワインを生産する。

トレンティーノ・アルト・アディジェ州はアルプスの恩恵から様々なスタイルで品質の高いワインを生み出しています。赤・白共に繊細でエレガンスさを兼ね備えたワインは幅広いお料理にも対応できると思います。是非この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか?

ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

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