キャンティの象徴!?藁に包まれた瓶「フィアスコ」の真実

イタリアワイン

こんにちは、わいんとくすりです。

今回はイタリアを代表する赤ワイン「キャンティ」に関する話題です。イタリアワインの中でも特に知名度の高い「キャンティ」。

その象徴的なイメージといえば、丸い瓶に藁が巻かれたスタイル「フィアスコ」ではないでしょうか。その歴史と現代とのギャップについて見ていきたいと思います。

キャンティとは?

すこしキャンティについて確認をしておきましょう。

キャンティは、イタリアのトスカーナ州を代表する赤ワインです。その語源は定かではありませんが、エトルリア語に起源があるのではないかと言われています。

使用されるブドウ品種はサンジョヴェーゼを主体に複数の品種を使用することができます。ここで知っておいてもらいたいのは許可されているブドウが黒ブドウだけではないという事。マルヴァジアやトレッビアーノなど白ブドウも使用できることが特徴です。

生産エリアはキャンティ・クラシコ地区(フィレンツェからシエナの間にある丘陵地帯)を取り囲むように位置しています。歴史的な背景からキャンティとキャンティ・クラシコのエリアは区別されていることに注意してくださいね。

キャンティを創った偉人たち

キャンティの話題で切っても切り離せない人物が二人います。

一人目はフィレンツェの領主であるメディチ家大公であるコジモ3世です。

彼は1716年にキャンティ、ポミーノ、カルミニャーノ、ヴァル・ダルノ・ディ・ソプラという4つの境界を定め、原産地呼称概念の先駆けともいえる制度を制定しました。

メディチ家大公 コジモ三世
ベッティーノ・リカゾーリ男爵

二人目がイタリア王国第二首相も務めたベッティーノ・リカゾーリ男爵です。

1870年ごろまでのキャンティは酸が高く、タンニンもしっかりとした硬く飲みにくいワインであったようです。リカゾーリ男爵はより柔らかく、飲みやすく、日常になじむワインを目指し、補助品種の選定と構成割合に着手します。

その結果、サンジョヴェーゼ70%、カナイオーロ20%、マルヴァジア10%という黄金比率を見出しました。この比率は現在のキャンティの基礎を築いたとも言われています。

この構成についてリカゾーリ男爵は、サンジョヴェーゼがキャンティの香り、力強さを表現し、カナイオーロは硬さを和らげる甘みを、マルヴァジアは2つの品種を和らげ、親しみやすさを与えてくれるると記録に残しています。

この偉大な二人の働きによって現在のキャンティがあるといっても過言ではありません。

フィアスコとは?

「フィアスコ(Fiasco)」とは、丸いボディに藁を編んだ籠をまとわせた伝統的なガラス瓶のこと。形がかわいいです。
中世からルネサンス期にかけて、イタリアではワインの容器として広く使われていました。藁で包むことで、

  • 輸送時の衝撃を和らげる
  • ガラスの強度不足を補う
  • 瓶が倒れにくくなる

といった実用的な役割がありました。

giulio nepi, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

フィアスコが与えるイメージ

20世紀半ば、キャンティがアメリカや日本に輸出され始めると、フィアスコは「イタリアらしさ」の象徴として広まりました。

ギンガムチェックのテーブルクロス、藁に包まれたフィアスコの瓶、テーブルに赤いキャンドルを立てた光景は、当時のイタリアを連想させる代表的なシチュエーションでもあります。

このように「イタリアらしさ」を表現する中で、どうしても拭えないものがあります。そう、キャンティは「大衆の安酒である」というイメージです。

キャンティの名が世界に広がるとともに、供給量を確保するためにイタリア政府はキャンティワインの生産地域を大幅に拡大しました。これが裏目に出てしまいます。キャンティを名乗っていれば売れるのをいいことに低品質なワインが出回ってしまい、安酒のレッテルが貼られてしまったのです。

このイメージは映画の演出にも用いられており、『ローマの休日』では、フィアスコ瓶が惹かれ合う男女の身分の差を象徴する小道具として登場しています。

映画の効果も相まって、「フィアスコ瓶=安酒」というイメージがさらに過熱してしまったのです。

現在のキャンティとフィアスコ

では、今現在もキャンティは「大衆の安酒」なのでしょうか?

最近のキャンティの生産者は品質の向上に努めており、「おっ!?」と思うようなワインにも出会うことがあります。

先日いただいた「VOLPETTO Chianti 2022」は果実味が豊かでストラクチャーもしっかり、それでいてとても親しみやすい、とても上質なワインでした。

品質の向上にあたって、負のイメージ払拭のためにフィアスコの使用頻度は少なくなりました。現在はいかり肩のボルドータイプで流通するものがほとんどです。

一方で、一部の生産者は「伝統回帰」としてあえてフィアスコを採用する動きもあるようです。レトロな魅力が見直されつつあるのは嬉しいですね。

古き良き時代に活躍したフィアスコは、どこか穏やかな風景を思い起こさせ、郷愁的な気持ちになったりと、情緒面にも訴えかけることが個人的にあると感じています。単なる容器以外の効果があることもフィアスコの魅力ですね。

まとめ

フィアスコは「キャンティ=藁の瓶」という世界的イメージを作り上げた存在です。


現在のキャンティは品質を重視した高品質なワインへと進化してきており、それに伴ってワインのボトルもボルドータイプへと移り変わっています。

古きものとして語り継がれているフィアスコですが、ワイン好きの会話の中で「昔のキャンティは藁の瓶だったよね」という話題が出ると、ちょっとした豆知識として盛り上がるかもしれませんね。

次にキャンティを手に取るとき、ボトルの形や歴史にもぜひ思いを馳せてみてください。

ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

コメント