キャンティクラシコ グランセレツィオーネの基礎知識|規定から味わいの特徴まで

イタリアワイン

こんにちは。わいんとくすりです。

今回はキャンティ・クラシコ・グラン・セレツィオーネ(以下、グラン・セレツィオーネ)についてみていきたいと思います。

グラン・セレツィオーネとはキャンティ・クラシコのイメージの向上と高級化を目指して設けられたキャンティ・クラシコにおける最上位クラスのワインのことで、厳しい基準をクリアしたワインにだけその資格が与えられます。

その品質は確かなもので、世界的にも高い評価がされており、興味のある方も多いのではないでしょうか?

ただし、高級ワインなので、なかなか手が出しづらいのか正直なところですよね。この記事を読んでいただければ、グラン・セレツィオーネがどのようなものか理解でき、購入の一助にもなると思います。是非ご一読いただき、理解を深めていってください。

この記事を書くにあたってのお断りになりますが、調べた内容は2024年10月時点での内容です。規定については、今後内容が変更になってくる場合がございますので、ご了承ください。

キャンティ・クラシコ概要

キャンティ・クラシコの質的分類 キャンティ・クラシコ協会HPより作成

グラン・セレツィオーネを知るうえで、まずは基本となるキャンティ・クラシコをみてみましょう。

キャンティ・クラシコはイタリア、トスカーナ州のフィレンツェからシエナの間に広がる丘陵地帯で造られる一定の規定を満たしたワインで、「黒い雄鶏:ガロ・ネロ」が目印です。

主要ブドウ品種はサンジョヴェーゼで、80〜100%使用されます。その他の使用可能品種は在来品種であるカナイオーロ・ネーロやコロリ―ノの他、国際品種のカベルネ、シラー、テンプラ二ーリョなど合計49種類の黒ブドウが認められています。

以下に使用可能品種をまとめておきます。

キャンティ・クラシコで使用可能な補助品種一覧

DISCIPLINARE DI PRODUZIONE DELLA DENOMINAZIONE DI ORIGINE CONTROLLATA E GARANTITA DEI VINI
“CHIANTI CLASSICO” より作成

キャンティ・クラシコはイタリアのワイン法において初めて品質としての分類が導入された銘柄です。

この分類は3つにランク分けされており、「アンナータ」と呼ばれる通常のヴィンテージワイン、次に熟成期間が延長された「レゼルヴァ」、最上位に位置する「グラン・セレツィオーネ」です。

グラン・セレツィオーネの規定

グラン・セレツィオーネの規定は以下の5つです。

  1. サンジョヴェーゼの使用比率90%以上、残りの最大10%が在来黒ブドウ品種
  2. 単一畑、または自社畑の厳選された最高のブドウを使用、買付ブドウの使用禁止
  3. 熟成期間は30ヶ月以上(内、瓶内熟成3ヶ月以上)、アルコール度数13.0%以上
  4. ラベルへ追加地理地区(UGAUnità Geografica Aggiuntiva)の付記が可能
  5. 優れた官能特性を有する

これら規定をクリアし、さらに審査官による試飲と官能試験をパスすることで流通の許可がおりるため、必然的に高品質のワインである証になります。

グラン・セレツィオーネ誕生の経緯

グラン・セレツィオーネは2014年にできた枠組みで、今年で10年目になります。なぜ「レゼルヴァ」の上位格付けが必要だったのでしょうか?

キャンティの負の歴史として、よく語られるのがもともとは銘酒の産地であったキャンティワインが需要に応えるために栽培範囲を拡大させてしまい、低品質、安酒のイメージが広まってしまったというものです。

元々のフィレンツェからシエナ間でワイン造りを行ってきた醸造家の抗議もあり、1932年にキャンティと差別化を行うため「クラシコ」が付記出来るようになりました。さらに1996年にはキャンティとは異なる生産規定が設けられ、完全に独立したD.O.C.G.として認定されたのです。

それでは、「クラシコ」の付記が行われ、D.O.C.G.として独立しただけで問題は解決したのでしょうか?答えは「No」です。

さらなる進化が必要と考えたキャンティ・クラシコの生産者を束ねるキャンティ・クラシコ協会はイメージの向上と高級化を目指して「グラン・セレツィオーネ」を誕生させました。

以前までは他のキャンティ・クラシコと同様に国際品種も使用可能だったのですが、先に述べたように、国際品種のブレンドは禁止という規定が加わりました。

グラン・セレツィオーネの概念として、テロワールとの結びつきが根本にあり、自社畑のブドウだけで造ることが必須となります。よって、ワインとテロワールの組み合わせを強化し、より強固なアイデンティティを与えるために、在来品種だけがサンジョヴェーゼを補完するものとして指定されたのです。

この点に関しては同様のサンジョベーゼ主体に国際品種をブレンドしたワイン、「スーパータスカン」への意識も感じます。世界的にも評価の高い「スーパータスカン」と競うことで、キャンティ・クラシコエリアの価値をより引き出すという狙いもありそうです。

注意しなければならないのが、ワイナリー側からすると「買いブドウ禁止」や「30ヶ月の熟成期間」という点を考えると、すぐに現金化が難しいことです。それなりにブドウの収量があり、資本力がないと生産できないといった点では生産者にとって平等…とはいいきれないのかもしれません。

発足当初は33銘柄でしたが、現在は161生産者221銘柄まで増えてきています。2023年はDOPワイン生産量の約6%を占めています。伸びしろもあり、今後の発展に期待したいですね。

味わいの特徴

グラン・セレツィオーネはキャンティ・クラシコの頂点とはいえ、キャンティ・クラシコのカテゴリの一つです。その典型的な味わいから大きく外れてしまっていては官能試験をパスすることはできません。

外観はアンナ―タやレゼルヴァと大きくは変わりません。ルビーレッドが中心で、時間が経つとガーネットが出てきます。色味はそこまで濃くないのは、サンジョヴェーゼの果皮が薄く、赤紫色であるという特徴に由来します。

大きく違いが表れるのは味わいです。まずは味わいの特徴を知るために「アンナ―タ」と「レゼルヴァ」をおさえておきましょう。

端的に表現すると、アンナ―タはフレッシュ・フルーティーで親しみやすく、レゼルヴァは果実味豊かですが、決して強すぎず、熟成による一体感を感じる味わいになっています。

グランセレツィオーネはというと、長期の熟成を経ているにも関わらず、そのフルーティーさは健在で、スパイスを伴った印象に包み込まれるような味わいがあります。しっかりとしたストラクチャー、フィネスがあり、タンニンと酸の絶妙なバランスからワインで蕩けるような感覚に酔いしれることができます。余韻も非常にながく、単体でも十分楽しめるワインです。

若くからも楽しめますが、長期熟成能力が非常に高く、熟成の楽しみもあるワインです。

まとめ

いかがでしたか?今回はキャンティ・クラシコの最上位グラン・セレツィオーネについて解説してみました。まとめますと

グラン・セレツィオーネのポイント
  • 特性は5つからなり、厳格な官能試験もパスして市場へ出回る
  • イメージの向上と高級化を目指して誕生した珠玉のワイン
  • 果実とスパイスの調和のとれた香り、しっかりとしたストラクチャー、フィネスを有し、蕩けるようなフルボディの味わい

グラン・セレツィオーネはキャンティ・クラシコの最上位ということもあり、品質の高さもお墨付きです。お値段は1万円を超えるものもが目立ちますが、ワイナリーのフラッグシップワインをこの値段で購入できると考えると意外に安いかもしれません。飲んで後悔のない一本になるのは間違いありません。是非一度お試しになってみてください。キャンティ・クラシコの見方が変わりますよ。

グラン・セレツィオーネに関しては村により特徴が異なるために11の地理的名称の付記が可能となっていますが、この件に関してはまた次の機会にしたいと思います。

ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

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