キャンティ・クラシコのUGAとは?|地域の特徴と味わいを知って、ワイン選びに活用しよう

イタリアワイン

こんにちは。わいんとくすりです。

この記事ではキャンティ・クラシコのUGAについてみていきます。

UGAとは“Unità Geografiche Aggiuntive”の略で、日本語にすると「追加地理地区」と言われるものです。キャンティ・クラシコの格付け最上位に位置するグラン・セレツィオーネのラベルに付記することができる地理的名称のことを指します。

キャンティ・クラシコの生産地域は広大で、地域によって標高や土壌の違いも様々です。テロワールの違いはワインに大きな影響を与え、その特徴を一括りで表現することは困難です。

そこで出てきたのがUGAの概念になります。

今回の記事を読んで、キャンティ・クラシコのUGAの特徴を知っていただき、その広さ、奥深さが少しでも伝われば良いなと思います。それでは早速みていきましょう。

UGA概論

User:Kattivik, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

キャンティ・クラシコ地区はフィレンツェからシエナ間に広がる丘陵地帯で、その面積は72000haと広大です。村ごとにテロワールの特徴が異なっており、ラベルへの地理的名称の表記が長年議論されてきました。

決議がなされたのは2021年6月。キャンティ・クラシコ地区を醸造学上の認知度、歴史的重要性、名声、生産量の観点から特定の基準に基づいて11の地域に区分し、その地域名をラベルに表示することが可能になりました。当面は最上級のクラス「グランセレツィオーネ」にのみ適応されます。

UGA導入の目的は以下の4点とされています。

  1. ワインと産地の組み合わせの関連性強化
  2. アイデンティティと地域性の面での品質向上
  3. 消費者がブドウの産地を知ることができる
  4. 提供品の差別化による需要の刺激

UGAの種類

11地区名に区別されているUGAですが、北側のフィレンツェを中心に時計回りでみていくと、以下のようになります。詳しい地図に関してはキャンティ・クラシコ協会ホームページにてご確認ください。

UGAに認定されている11地区名
  1. Greve(グレーヴェ)
    • Lamole(ラモーレ)
    • Montefioralle(モンテフィオラーレ)
    • Panzano(パンツァーノ)
  2. Radda(ラッダ)
  3. Gaiole(ガイオーレ)
  4. Castelnuovo Berardenga(カステルヌオーヴォ・ベラルデンガ)
  5. Vagliagli(ヴァグリアーニ)
  6. Castellina(カステッリーナ)
  7. San Donato in Piggio(サン・ドナート・イン・ポッジォ)
  8. San Casciano(サン・カッシャーノ)

このUGAの表記は当面グラン・セレツィオーネにのみ適応されますが、アンナータ、レゼルヴァに関しても順次適応されるように検討されています。

グラン・セレツィオーネはもともとテロワールとの結びつきが強く求めてられている呼称のため、UGAとの相性も良く、相乗的に強固なアイデンティティの形成に繋がります。

キャンティ・クラシコの土壌

Davide, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

UGAを知る上でおさえておきたいのがキャンティ・クラシコの土壌についてです。聞いたことのない土壌も多いと思いますので、ここでみてみましょう。

土壌の名称と特徴
  • アルべレーゼ:
    炭酸カルシウムを豊富に含む石灰岩。キャンティ・クラシコ地域の中央高地にある斜面に多い。
  • シラーノ:
    キャンティ・クラシコの西側でアルべレーゼと重なることが多い粘土質の泥灰岩。
  • 沖積土壌:
    石の多い土壌で、主にサン・カッシャーノを中心とした西側にみられます。
  • ガレストロ:
    灰色の薄片上の頁岩で、石灰質土壌で構成されています。斜面部にみられることが多く、アルべレーゼに重なることが多い。キャンティ・クラシコを代表する土壌。
  • マチーニョ:
    モンティ・デル・キャンティの基盤岩。ラモーレなどの高地で重要な役割を担っており、硬い非石灰質砂岩。
  • ピエトラフォルテ:
    マチーニョに似た砂岩ですが、石灰質のもの。主に北中部にみられ、パンツァーノを構成する重要な土壌。

各UGAの特徴と味わい

ここまででUGAの総論についてみていきましたがいかがでしたか?続いて各論をみていこうと思います。それぞれの生産地域のテロワールと味わいについてみていきましょう。

Greve(グレーヴェ)

他のUGAが市単位で分けられているのに対して、Greve in Chiantiは4つのUGAに分割されています。それぞれがラモーレ、モンテフィオラーレ、パンツァーノ、グレーヴェです。

グレーヴェはその中でも最大域になっており、さらに細かくストラーダ地区、サンポーロ地区、キャンティ山脈の東側、西側の4つに分かれます。エリア毎に気候、土壌構成も異なっており、さまざまなスタイルのワインが造られます。

Lamole(ラモーレ)

グレーヴェに包括されるエリアで、栽培面積は95haとUGA内で最小域となっています。

小さな急勾配の段々畑でブドウ栽培が行われています。キャンティ・クラシコ内で最も高い位置にブドウ畑が位置しており、色の淡い、すっきりとした繊細な香りをもつワインが造られます。

最も標高が高く、小さい面積で認定されているということは、それだけ歴史的にも重要で、特徴的なテロワールであることがわかります。実際にクリュとして注目度の高い地域になります。

Montefioralle(モンテフィオラーレ)

グレーヴェに包括される丘の上にある小さなエリア。南北に連なる尾根の東側斜面に沿ってブドウ畑が広がります。

基本的な土壌はピエトラフォルテ、標高は400mと他の生産地に比べると少し高めです。熟した果実、まろやかなタンニン、濃密な花の香りが特徴的。

Panzano(パンツァーノ)

グレーヴェの南にある高い尾根の端に位置するエリア。尾根の西側斜面に沿ってブドウ栽培が行われています。

土壌構成は一部にマチーニョやアルべレーゼがみられますが、大部分はピエトラフォルテやシラーノです。深みがあり、しっかりとしたストラクチャーを持ったワインが多い。

Radda(ラッダ)

パンツァーノ、ラモーレの南側に位置するエリアで、山脈に近いことから全体的に冷涼なため、キャンティ・クラシコ内でブドウの収穫が最も遅くなります。

ラッダ川の分水嶺にもなっており、土壌構成にも影響を与えます。丘陵部の上部はマチーニョ、中低部はピエトラフォルテが主体。テロワールを反映して緊張感のある繊細でエレガントなワインができます。

Gaiole(ガイオーレ)

キャンティ・クラシコの礎を築いたリカゾーリ男爵の拠点となるブローリオ城があるエリア。ラッダの南側に位置し、深い森に覆われた丘陵地帯でブドウ栽培が行われます。

土地の総面積が最大域で、土壌は泥灰岩または石灰岩が中心で標高は300−500m。ラッダのワインスタイルに近いですが、より濃密で濃い果実の風味が感じられます。

Castelnuovo Berardenga(カステルヌオーヴォ・ベラルデンガ)/Vagliagli(ヴァグリアーニ)

左側がヴァグリアーニ、右側がカステルヌオーヴォ・ベラルデンガ、二つを合わせて蝶のような地形となる最南部のエリア。

土壌構成が綺麗に分かれており、高地から順にマチーニョ→アルべレーゼ→シラーノ→砂地・凝灰岩となります。温暖な地中海性気候から造られるワインはキャンティ・クラシコ内で最も力強いと言われ、深みのあるタンニンと木材の特徴的な香りが広がります。

Castellina(カステッリーナ)

ブドウ畑の面積が1680haと最も広いUGAで、その大部分がエルザ渓谷に面した西側の斜面に広がっています。

栽培面積の広さから、多様な土壌構成を持ちます。基本はシラーノとアルべレーゼですが、目の細かい粘土質もみられます。一般的にダークフルーツの香りとピリッとしたミネラル感が特徴といわれています。

San Donato in Piggio(サン・ドナート・イン・ポッジォ)

バルベリーノ・タヴァルネッレとポッジボンシという2つの自治体が合併して出来た唯一のUGA。パンツァーノ、カステッリーナに隣接しており、中央部と南西部で主にブドウ栽培が行われています。

北側はアルべレーゼ、南西部はアルべレーゼにピエトラフォルテとシラーノが加わります。カステッリーナのダークフルーツの風味とパンツァーノのストラクチャーが合わさったようなワインになっています。

San Casciano(サン・カッシャーノ)

北西の角に位置するUGAで、標高の低い丘陵地帯でブドウ栽培が行われています。栽培面積はカステッリーナに次いで2番目に大きく、生産形態も大規模です。

土壌構成は石のような沖積土壌とアルべレーゼ。ワインのスタイルは、赤い果実、柔らかいタンニンを備えたチャーミングなワインに仕上がります。

まとめ

いかがでしたか?今回はキャンティ・クラシコエリアのUGAについてみていきました。
まとめてみますと、

まとめ
  • キャンティ・クラシコのエリアを特徴から11の生産地域に分類
  • グラン・セレツィオーネにのみ適応されるが、クラシコなどへの適応範囲拡大も予定
  • ブドウ品種は同じだが、各生産地域のテロワールを表現したワインの味わいに仕上がっている。

キャンティ・クラシコエリアのUGAは2021年に発足されており、まだまだ発展途上の分野ですが、今後、産地と消費者を結びつける重要な役割を担っていくと思います。好みのUGAを知ることが出来れば、自分の思った味わいのキャンティ・クラシコを購入することが出来ますよ。

キャンティ・クラシコ・グラン・セレツィオーネを選ぶ際に少しでも参考にしていただければ幸いです。

ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

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