こんにちは。わいんとくすりです。
今回はDOC Colli Tortonesi Timorasso 2022(コッリ・トルトネージ・ティモラッソ)をテイスティングしていきます。生産者はピエモンテでお馴染みのLa Spinetta(ラ・スピネッタ)です。
最近のイタリアワイン界隈でたびたび話題に上がる品種ティモラッソ、飲んだことありますか?
気になる方は要チェック!早速みていきましょう。
この記事はこんな人にオススメ
この記事でわかること
ティモラッソの特徴
コッリ・トルトネージ・ティモラッソの特徴
結論からいってしまうと、ティモラッソは充実した香りとその果実味から今飲んでも、熟成させても楽しめるワインでした。
その理由はなんなのか?生産者や栽培・醸造、実際のテイスティングについて見ていきましょう。
生産者について

ラ・スピネッタはピエモンテ州の銘酒、バルバレスコを牽引するトップ生産者です。
始まりは1977年、イタリア初の単一畑で造ったモスカートのワインで名を広めました。
この成功を受けて事業は拡大。赤ワインの生産に注力していきます。初めての赤ワインは初代当主の名を持ち、ネッビオーロ、バルベーラから造られる「Pin」です。Pinの栽培・醸造で得たノウハウは今もなおバルバレスコの生産に大きく影響を与えています。
2000年代に入るとトスカーナ州に進出しカサノヴァ・デッラ・スピネッタを設立。 代表的な「Sezzana」を始め、当時主流となっていた国際品種は敢えて使用せず、サンジョヴェーゼやヴェルメンティーノにこだわったワイン造りを行います。
近年ではシャンパーニュへの敬意と熱い情熱を持ってスパークリングワインの生産へ進出。アルタ・ランガで有名な「コントラット」を買収し、古典的製法を守り抜いています。コントラットのアルタ・ランガはよく見かけますよね。
最も新しい取り組みとして挙げられるのがトルトーナの丘陵地で作られるティモラッソ。2018年に栽培を始め、ファーストヴィンテージが2019年です。ティモラッソから造られるワインは「世界中の最高級白ワインに匹敵する」とホームページに記載されており、今後も目が離せません。
ラ・スピネッタは国際的に魅力のあるワインを造るのみならず、ピエモンテの地域と深く結びついたワイン造りを常に意識しています。
ピエモンテでのラ・スピネッタのラインナップは以下の通り。
ワインについて
ブドウ品種
ティモラッソとはどのような品種なのでしょうか?
ティモラッソは古くからトルトーナ地方で広く栽培されていたブドウ品種で、「Timorossa」や「Timorazza」とも呼ばれています。気候条件への適応性が乏しく、このトルトーナ地方以外では見かけません。収穫時期も9月後半と晩熟型の品種です。
取り扱いが難しく、収量も他の品種よりやや劣ることから、フィロキセラ禍以降はバルベーラなどに植え替えられてしまった時期もあったようです。
1980年代に入ると、トルトーナのワイン生産者Walter Massaらがティモラッソの可能性に気付き、品種の復興に尽力されたことで、生産量が徐々に増えていきます。現在では有名な生産者たちがトルトーナに集まり、ティモラッソの栽培に携わるようになっています。
原産地呼称:DOC Colli Tortonesi Timorasso

原産地呼称の記事についてはこちらをご覧ください。
DOCコッリ・トルトネージ・ティモラッソの生産可能エリアはイタリア、ピエモンテ州南部、トルトーナの街の南側。ちょうどすぐ西側がDOCG Gavi(ガヴィ)のエリアです。
このDOCはティモラッソ以外のブドウ品種も認められており、黒ブドウはドルチェット、バルベーラ、クロアティーナ、フレイザ、白ブドウはコルテーゼ、ファボリータ、モスカートを主要品種として造ることもできます。
概ね主要品種の割合は85%以上。ただし、ティモラッソに限っては95%以上の使用割合が求められています。他にもコルテーゼは95%、モスカートは100%と白品種には厳しめです。
造られるスタイルはスティルワインの赤白のほか、ロゼや弱発泡性のフリツァンテ、新酒のNovello(ノヴェッロ)の生産も可能です。
醸造規定は最低10ヶ月の熟成期間が義務付けられており、最低アルコール度数12%、最低総酸度5.0g/Lとなっています。
DOCコッリ・トルトネージ・ティモラッソの味わいは以下の通りです。
DISCIPLINARE DI PRODUZIONE DEI VINI A DENOMINAZIONE DI ORIGINE CONTROLLATA“COLLI TORTONESI” より
基本情報~栽培・醸造~

ワインは生産者や栽培環境、醸造過程といった背景も知ることで、より興味深く味わうことができます。この点にも目を向けてみていきましょう。
栽培
350〜400mに位置するコッリ・トルトネージの丘陵地帯で栽培されるブドウを使用。この地域としては最も高い標高になります。畑の傾斜は南東~南西向きになっており、良好な日当たりを確保しています。
この条件から考えると、酸を保ちつつ、ゆっくりと完全にブドウの成熟を待つことが出来そうです。
主な土壌構成は石灰・粘土質、砂質土壌、樹齢は約25年とまさに働き盛りのブドウ樹たちからワインが造られています。
醸造
除梗後にソフトプレス。温度管理された小さなステンレスタンクでアルコール発酵が行われます。
澱とともに8ヶ月間熟成され、瓶詰め。その後も3ヶ月間の瓶内熟成を経て出荷されます。
下記が基本情報です。
ピエモンテ州 2022 ヴィンテージ情報
熟成可能となれば、やはり気になってくるのはヴィンテージ情報ですよね。
ですが、残念ながら2022年のヴィンテージ情報となるとなかなか見つかりませんでした。バローロやバルバレスコの熟成規定からすればまだ公表されていないのが当然だと思います。
今回のブドウ品種はティモラッソとメジャーな品種ではないので、ヴィンテージ情報は見当たりませんでした。
実際にテイスティングをしてみて

外観
濃いイエロー。これが麦わら色です。
成熟度の高さを反映してか、壁面を伝う涙もややじっとりとしています。
いつもはテイスティンググラスで写真を撮るのですが…すみません、撮り忘れてしまいました( ノД`)シクシク…

外観の評価として色が濃く、見た目から成熟して豊かな印象が感じられました。
香り
熟したマスカットに黄桃、レモングラスがほんのりと香る。白いお花のイメージもあります。
澱と共に8カ月間しっかりと接触しているため、酵母っぽい印象もあります。よく樽と迷うやつ。
香りの印象としては、熟度のある果実とその奥にあるフレッシュさが特徴的だと思いました。
味わい
アタックに充実した果実のボリューム感、ほんのりとした甘さを感じる。
酸は穏やかに感じますが、甘みがあるのでマスクされている可能性はあります。すこし口に含んでいると唾液がじわっと滲み、口内をキュッと引き締める感覚があるので、捉えにくいですが、酸度は低くないと感じます。
アフターは心地の良い苦味。おそらく澱の印象が影響しているのかなと思います。
余韻は長い!
それぞれの構成要素が高いレベルでバランスを保っており、しっかりとした酒質から長期熟成の可能性を感じます。
飲み頃
しっかりとした酒質、酸味があるので長期の熟成にも耐えうるパワーを感じました。今回は3年とちょい熟のタイミングでしたが十分美味しいと感じました。これからの変化も楽しみなワインです。
長命な赤ワインだと若いうちはなかなか酸っぱかったり、渋かったりで飲みにくい印象がありますが、今飲んでも美味しくいただけるのは嬉しいポイントですね。
おすすめの温度帯は10-13度と記載されていましたが、私はそれよりも高めの16〜18度がよりふくよかな果実感が感じられて美味しく感じました。
総評として、今飲んでも楽しめるが、熟成する楽しみもあると感じた1本です。
まとめ
いかがでしたか?今回はラ・スピネッタのDOCコッリ・トルトネージ・ティモラッソ2022のテイクティングレポートをお届けしました。
麦わら色の輝かしい液体は華やかでゴージャスといった言葉がとてもよく似合う素晴らしいワインでした。
長期熟成が可能でありながら、今飲んでも美味しいワインはとても貴重だと思います。
次のヴィンテージが待ち遠しいです。
ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

薬剤師/2023ワインエキスパート/イタリアワイン好き/寅年
とあるワインバーでワインのセミナーを聞き、ワインを学習の対象として見るようになりました。さらに体系的な勉強がしたいと思い、2022年にワイン検定ブロンズ、シルバー、2023年にJSAワインエキスパートを取得。このブログでは試験で得られないイタリアワインの面白さをお届けしていきます。
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