フリウリ・ベネツィア・ジューリア州のワインと料理の特徴|東欧の文化が与える影響とは!?

生産地域

こんにちは。わいんとくすりです。

前回に引き続きイタリアのワイン産地を巡っていきます。今回はヴェネト州のお隣、北東部に位置するフリウリ・ベネツィア・ジューリア州です。

フリウリ・ベネツィア・ジューリア州は白ワインの産地として高い評価を得ている生産地域です。土着品種だけではなく、国際品種からも品質の優れたワインが生み出されています。
近年は白ブドウを赤ワインを造るようにして造ったワイン、オレンジワインも有名になってきている期待の地域です。

そんなフリウリ・ベネツィア・ジューリア州をとりまく環境や料理、ワインについてみていきたいと思います。

今回の記事を読んでいただければ、フリウリ・ベネツィア・ジューリア州の郷土料理やワインの特徴について理解が進むと思います。是非ご一読ください。

お断りになりますが、総論の記事ですので、個別のD.O.C.G.やD.O.C.の詳細な記述については避けさていただきます。今後詳しくみていこうと考えていますので、今回はご容赦願います。

 

フリウリ・ベネツィア・ジューリア州概論

フリウリ・ベネツィア・ジューリア州は北にオーストリア、東はスロヴェニアと国境を接し、西はヴェネト州に面します。南にはアドリア海が広がる州です。

州の大半を占めるフリウリと、トリエステ周辺にある小さなベネツィア・ジューリアの2つに分かれます。

州都はトリエステ。フリウリの中心地はウーディネですが、歴史的に重要拠点であったトリエステが州都になっています。

州の位置からもドイツや東欧への玄関口であり、公用語はイタリア語以外にもドイツ語やスロヴェニア語が認められています。

気候・風土

北のオーストリア国境に沿って、アルプス山脈、プレアルプス山脈が東西に延びており、その南に丘陵地帯、さらに南にいくと平野が広がり、アドリア海に辿り着きます。平野の真ん中に流れるタリアメント川がアルプスからアドリア海に向けて流れています。

主要生産地であるコッリオとコッリ・オリエンターリはポンカと呼ばれる柔らかい泥灰土と砂岩の混ざる土壌が特徴的です。水はけがよく、ブドウ栽培に適していて、良質の果実味に適度のミネラル感をワインに与えます。

トリエステ近郊にある石灰質のカルソ台地は標高200~600mで、アドリア海に面して細長く延びています。水による浸食を受けており、数多い洞穴や地下水脈があるユニークな土地です。

海岸沿いはアドリア海の影響で亜地中海性気候、丘陵地帯も比較的温暖です。平野部になると温和な気候ですが、湿度が高くなります。北部はアルプス性気候で雨が多くなります。

フリウリ・ベネツィア・ジューリア州の食材・料理

食材として最も有名なものがイタリアを代表するパルマ産に並ぶ「サンダニエレ産の生ハム」です。

アルプスからの冷たく乾燥した風と、アドリア海からの湿った風が出合い、この空気が生ハムの熟成に大きな影響を与えます。特徴として、塩漬けの後にプレスをするため平べったいこと、パルマ産よりも塩味が少ない甘口であることが挙げられます。

前菜としてよく食べられるのが「フリーコ」と呼ばれる料理です。モンタージオやアジアーゴといった土地のチーズに玉ねぎとジャガイモから作られる薄いオムレツのような料理です。寒い冬を乗り越えるため保存のきく食材が主に使われます。

フリウリに特徴的な料理として、パプリカを使ったハンガリー風牛肉のシチュー「グーラッシュ」があります。19世紀のトリエステはオーストリア-ハンガリー帝国の重要な港町であったため、このような料理が郷土料理として地域に根付いています。

チーズは牛乳原料のハードタイプ「モンタジオD.O.P.」があります。このチーズが造られるモンタジオ山が名前の由来になっています。

フリウリ・ベネツィア・ジューリア州のワイン

ワインの生産量は85%が白ワインという、白ワインの名産地として知られるフリウリ・ベネツィア・ジューリア州。近年では土着品種を使用した赤ワインにも注目が集まってきています。

早速どのような品種が使用されているのかをチェックしていきましょう。

主なブドウ品種

主なブドウ品種を白・黒の順で確認しましょう。

<白ブドウ>

Furiulano(フリウラーノ):
フリウリ・ベネツィア・ジューリア州を代表する白ブドウ。ヴェネト州やロンバルディア州でも栽培されています。心地よい果実味に穏やかな酸味、ビターアーモンドの風味と後味のわずかな苦味が特徴。

Ribolla Gialla(リボッラ・ジャッラ):
州東部のゴリツィア周辺で栽培される品種。お隣のスロヴェニアでも栽培されています。軽やかかつ繊細、フレッシュな白ワインやスパークリングワインが造られています。

Picolit(ピコリット):
甘口ワインの原料としてヴェネツィア共和国の時代から有名だった品種。受粉が困難で、収量は通常の品種の1/10程度しか収穫できません。生産量自体も少ないため、希少性が高く、価格は高め。 

<黒ブドウ>

Fabio Bruna, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

Refosco dal Peduncolo Rosso(レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ・ロッソ):
フリウリ・ベネツィア・ジューリア州を代表する黒ブドウ品種。濃いめの色素にベリーの風味。豊かな果実味としっかりとした酸が特徴。名前の由来は果梗も赤くなることに由来しPeduncolo Rosso(=赤い果梗)と名付けられた。

Schioppettino(スキオッペッティーノ):
隣のスロヴェニアでも栽培される品種。リボッラ・ネーラとも呼ばれる。明確な赤系果実に胡椒などのスパイスのニュアンス、酸度はやや高めで渋みも比較的しっかりとある堅固なイメージをもつ品種。

土着品種を主に取り上げましたが、ピノ・グリージョなどの国際品種からも目を見張るようなワインが造られています。

主なD.O.P.ワイン

フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の代表的な銘柄を見ていきましょう。

Colli Orientali del Friuli Picolit(コッリ・オリエンターリ・デル・フリウリ・ピコリット):
Picolitを主体として造られる甘口の白ワイン。陰干ししたブドウから造られ、淡い黄金色でフレッシュなタイプから濃い黄金色でリッチで豊潤なタイプまで幅がある。

Collio Goriziano/Collio(コッリオ・ゴリツァーノ/コッリオ):
ポンカ土壌から良質な白ワインが生産される地域。FriulanoやRibolla Giallaから個性を持ったワインが造られています。ピノ・ビアンコやピノ・グリージョ、シャルドネなどからも品質の高いワインが生まれる卓越した白ワインの産地です。

Friuli Colli Orientali(フリウリ・コッリ・オリエンターリ):
Collioの北に位置する生産地域で、白ワインのCollioに対して赤ワインと甘口ワインに秀でたものが目立ちます。固有品種のRefosco dal Peduncolo RossoやSchioppettino、今回紹介はしませんでしたが、ピニョーロやタッツェレンゲといった黒ブドウ品種から個性的なワインが造られます。

まとめ

いかがでしたか?フリウリ・ベネツィア・ジューリア州について記載してみました。
まとめてみますと、

  • 独特な土壌、多様な気候に応じたブドウ栽培を実践している
  • 歴史的な背景から東欧の代表的な料理が郷土料理としてなじんでいる
  • 高品質の白ワインを生む銘醸地。土着の黒ブドウ品種から作られる赤ワインも注目されている

フリウリ・ベネツィア・ジューリア州の理解は深まりましたか?

フリウリ・ベネツィア・ジューリア州は白ワインの銘醸地として国内外から高い評価を受けている生産地域ですが、隠れた赤ワインの注目産地でもあります。最近は百貨店などでも多く見かけるので、是非試してみてくださいね。

今回はオレンジワインについては言及していませんが、今後テーマにしていけたらと思います。

ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

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