こんにちは。わいんとくすりです。
前回に引き続きイタリアのワイン産地を巡っていきます。前の記事でもお伝えしたようにイタリアは20州全てにおいてワイン造りを行っているワイン大国です。その生産量も毎年TOP3に入ります。
イタリアは日本同様、南北に長い国で、北と南とでは環境や気候が大きく異なります。
北にはアルプスの山々が連なった冷涼な環境です。南部は典型的な地中海性気候で温暖。アフリカからの熱風もこれを後押しします。フランスやオーストリアとの国境にも面していることから、それぞれの国の影響も少なくありません。
このような環境にあるイタリアを北部から中部、南部へと順番にみていきたいと思います。今回は北西部に位置するピエモンテ州です。
ピエモンテ州はワイン好きならだれしも一度は聞いたことがある「バローロ」や「バルバレスコ」といった超がつく有名ワインを生産している地域になります。
今回はピエモンテ州がどのような栽培・醸造環境にあるのかをお伝えするとともに、代表的な土着のブドウ品種からどのようなワインが造られ、どのような料理と楽しまれているのかをみていけたらと思います。
お断りになりますが、総論の記事ですので、代表的なD.O.C.G.のみの記載になってしまうことをご了承ください。D.O.C.やI.G.P.ワイン等については別の記事でご紹介していければと思っております。
イタリアワインの銘醸地 ピエモンテ州についてお伝えします
ピエモンテ州概論
ピエモンテとは「山の麓」を意味し、アルプス山脈の南側に広がる州です。
北はヴァッレ・ダオスタ州、東はロンバルディア州と一部エミリア・ロマーニャ州、南はリグーリア州と接しています。イタリアは海に接している州が多いのですが、ピエモンテ州には海がありません。
ピエモンテ州はフランスのサヴォア地方出身であったサヴォイア王家の支配が長かったことから、慣習や文化(もちろん食文化も)にフランスの影響が色濃くみられます。
州都は冬季オリンピックが開かれたこともあるトリノです。トリノはイタリア王国が成立した時の首都にもなっています。
アルプス山脈の麓になるため、州の73.6%が山岳あるいは丘陵地帯で、平地は26.4%になります。ブドウ栽培は州の南側にある丘陵地帯で行われ、平地では米などの農作物の栽培が盛んです。
気候は温帯、亜熱帯の大陸性気候。夏は暑く、湿気があり、嵐になることも少なくありません。冬の寒さは厳しく、湿度も高め。深い霧に覆われることもしばしば。雨は春と秋に集中しています。
水源はアルプスからの豊かな雪解け水が川から運ばれ、土地を潤しています。人口水路も整備されており、イタリアとしては珍しく、水に恵まれた州です。
ワイン生産量の94%がD.O.P.ワイン(D.O.C./D.O.C.G)で占められており、高品質なワイン生産地であることがわかります。生産割合は赤ワインが約60%を占めています。
ピエモンテ州の料理
ピエモンテ州の料理や食材についてみていきましょう。
代表的な料理としては、カットした野菜をアンチョビとニンニクのソースにディップして食べる「バーニャカウダ」はピエモンテ州が発祥とされています。他にもローストした仔牛肉をツナやアンチョビ、ケイパーのソースでいただく「ヴィテッロ・トンナート」も有名です。
イタリア料理といえばパスタですよね。
ピエモンテ州の代表として、卵黄を豊富に使った卵入り手打ち麺「タヤリン」、肉を詰め物にしたラビオリ「アニョロッティ」が有名です。
麺は小麦と水のみで作られる地方もありますが、こちらでは卵(しかも卵黄のみ!)も加えた麺です。また、作るのに手間のかかるラビオリが名物にもなっていることを考えると、州の豊かさが伺えますね。
次に食材です。
おさえておきたい食材はなんといってもトリュフです。トリュフにもいくつか種類がありますが、ピエモンテ州といえばトリュフの最高峰「白トリュフ」です。
ピエモンテ州以外でも、中部イタリアのマルケ州やウンブリア州、トスカーナ州でも採れますが、最も有名なものはピエモンテ州、アルバ産のものでしょう。
白トリュフは手打ちパスタやリゾットに生のまま、薄く削りかけて食べます。繊細な香りが特徴ですが、日が経つにつれて徐々に弱くなるため、1週間以内で消費する必要があります。
他にも牛乳を原料とするチーズ類、「ゴルゴンゾーラ」や「カステルマーニョ」などもワイン好きとしては知っておきたいところです。
ここまでみてみると、建国当初にイタリアの首都であったトリノの街を有するだけに、家庭的なものから高級食材を使った貴族の料理まで食に対する豊かさがわかりますね。
ピエモンテ州のワインの特徴
ピエモンテ州で特筆すべきはなんといってもトスカーナ州と双璧をなす銘醸地ということでしょう。ピエモンテ州の銘酒として挙げられる「バローロ」や「バルバレスコ」を筆頭として数多くの高品質ワインが並びます。D.O.C.G.の数も18銘柄とイタリア最多です。
D.O.C.G.は土着品種で作られることが多いので、まずは土着品種をみていきましょう。
主なブドウ品種
白ブドウ
コルテーゼ:
南部ピエモンテ州で栽培され、早飲み用のシンプルなワインが造られる。シトラスやフレッシュなハーブの香りにシャープな酸が特徴。D.O.C.G.のガヴィからは複雑味を伴ったワインが造られる。
アルネイス:
食用ブドウとしても好まれている品種。果実味に富み、酸は穏やか。昔はネッビオーロと混醸され、タンニンを和らげる目的でも使用されていました。1980年代に国際市場で成功し、注目されている品種でもあります。
モスカート・ビアンコ:
モスカートはマスカットの別名であり、香り豊かな品種。糖度も上がりやすく、さまざまな甘口ワインに使われます。
黒ブドウ
バルベーラ:
ピエモンテ州の広い範囲で栽培され、地元で人気のある品種です。親しみやすい果実味と酸の強さが特徴。
ドルチェット:
早熟な黒ブドウで、フレンドリーな果実味と豊かな色素が特徴。酸は控えめですが、タンニンは多め。オルメアスコという別名もあります。
ネッビオーロ:
ピエモンテ州を代表する高貴なブドウ品種。品種名は霧を意味する「ネッビア」に由来しています。色素量は少ないですが、豊かなタンニンと酸が特徴。栽培される場所の影響を受けやすい品種です。生産地によって呼び名が変わり、スパンナやキアベンナスカと呼ばれたりもします。
次に主なD.O.C.G.をみていきます。
主なD.O.C.G.
Gavi/Cortese di Gavi(ガヴィ/コルテーゼ・ディ・ガヴィ):
白ブドウであるコルテーゼから造られる優美なワイン。ミネラル感を伴った、しっかりとした酸があり、魚介類との相性が抜群に良い。
Asti(アスティ):
モスカート・ビアンコから造られる香り高いワイン。スパークリングワイン、白ワイン、遅摘みの甘口ワインが認められています。Astiといえば、甘口のスパークリングを指すことが多いですね。
Brachetto d’Acqui/Acqui(ブラケット・ダックイ/アックイ):
黒ブドウ品種のブラケットから造られる微発泡性の甘口の赤ワイン。通常の辛口の赤ワインも生産は可能です。同じ地域にあるアスティの赤バージョンです。
Barbera d’Asti(バルベーラ・ダスティ):
バルベーラを90%以上使用した赤ワイン。親しみやすい果実味と豊かな酸が特徴。品質が認められ、バルベーラ・ダスティから独立したD.O.C.G.としてNizza(ニッツァ)があります。
Dogliani(ドリアーニ):
ドルチェット100%から造られる色調が濃く、骨格のしっかりとした長期熟成能力のある赤ワイン。ドルチェット発祥の地ともされています。
Barolo(バローロ):
「ワインの王」「王のワイン」とも称される偉大な赤ワイン。ネッビオーロ100%で造られ、力強く、厳格で深遠さが特徴。長期熟成能力が高い。
Barbaresco(バルバレスコ):
バローロと比肩する高品質な銘柄。「ピエモンテの女王」とも称される。昔はバローロの弟分的な扱いでしたが、現在はバローロに比べて繊細で優美である点を売りとしています。
Gattinara(ガッティナーラ):
バローロと同じネッビオーロをベースとした赤ワイン。この地域ではネッビオーロをスパンナと呼びます。北ピエモンテの有名な赤ワインとして、過去にはバローロにも勝る名声を誇っていました。
Ghemme(ゲンメ):
ガッディナーラ同様、北ピエモンテで造られるネッビオーロをベースとした赤ワイン。もちろんスパンナとも言われます。ガッディナーラよりも醸造の規定が少し緩くなっており、より優美なワインが造られます。
まとめ
いかがでしたか?ピエモンテ州のワインについて記載させていただきました。
まとめてみますと
・基本的には冷涼で湿潤な地域。ブドウの収穫期には霧がかかることもしばしば。
・家庭的な料理から高級食材を使った手の込んだ貴族の料理まで豊富な種類の料理がある。
・バラエティ豊かな土着品種と高品質なワインの数々。それぞれの個性が光る。
ピエモンテ州のワインはどうしても高価格帯のものに目がいきがちですが、バルベーラやドルチェットは価格は控えめでも、十分美味しいものが見つかります。またアスティやブラケット・ダックイといった特徴的なワインの産地でもあります。
色々な楽しみ方ができるピエモンテ州のワイン。ぜひ一度お試しください。
ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお会いいたしましょう。
飲兵衛薬剤師
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