こんにちは。わいんとくすりです。
イタリアのワイン産地を巡っていきます。今回はトスカーナ州をとりまく料理やワインについてみていきたいと思います。
高度な芸術や文化が特徴のトスカーナ州ですが、ワインでも有名な銘柄が並びます。テーブルワインから高級銘柄まで幅広く生産されている地域で、代表的な銘柄である「キアンティ」はだれしも耳にしたことがあるのではないでしょうか?
今回の記事を読んでいただければ、トスカーナ州の郷土料理やワインの特徴について理解が進むと思います。是非ご一読ください。
お断りになりますが、総論の記事ですので、個別のD.O.C.G.やD.O.C.の詳細な記述については避けさていただきます。今後詳しくみていこうと考えていますので、今回はご容赦願います。
トスカーナ州概論
トスカーナ州はイタリア中部に位置指定し、北はリグーリア州、エミリア・ロマーニャ州、東はマルケ州、ウンブリア州、南はラツィオ州と接しています。西側にはティレニア海が広がっており、397kmもある長い海岸線を持ちます。
州都のフィレンツェをはじめ、シエナ、ピサ、ルッカ、アレッツォなど多くの観光地があり、毎年多くの旅行者が訪れます。文化財の豊かさは群を抜いていて、世界的な偉人であるミケランジェロやダ・ヴィンチを輩出し、世界遺産も数多く登録されています。
ワイン生産量の63%をD.O.P.ワインが占める高品質ワインの生産地です。赤ワインの生産量が87%と際立って高いもの特徴です。
1970年代から始まった「イタリアワイン・ルネッサンス」と呼ばれるイタリアワイン近代化の動きはこの州の生産者によって牽引され、自由な発想で生み出された近代的スタイルのワインは「スーパータスカン(スーパートスカーナ)」ともてはやされました。
気候・風土
北と東をアペニン山脈に囲まれて、西は地中海が広がります。丘陵地帯が66.5%と最も多く、山岳地帯が25.1%、平野部はわずか8.4%です。東のアペニン山脈と西のティレニア海の間にいくつもの谷(キアーナなど)と丘陵地帯が広がります。
基本的な土壌構成は粘土石灰質ですが、キアンティ・クラシコ地区やモンタルチーノ地区ではガレストロと呼ばれる泥灰土が薄く何層にも重なったシスト土壌が特徴的です。ほかにも、沖積土壌や火山性土壌も存在し、ボルゲリ周辺には多様な土壌が複雑に混在しています。
気候は地域によって大きく異なっており、内陸部は夏が暑く、冬が非常に厳しい大陸性気候、海岸部は温暖で雨も少ない地中海性気候です。
トスカーナ州の料理
イタリアを代表する文明地で、ルネッサンス文化の花開いたフィレンツェでは食に関して貴族料理の中心地でした。
貴族の料理として代表されるものは「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」でしょう。Tボーンステーキのことで、一度にロースとヒレ肉を味わうことができます。
ビステッカに使用されるブランド牛「キアーナ牛」は体高2m、重さ1.5tにもなる大きな白牛で、キアーナ渓谷で飼育されることからこの名前がついています。農耕目的に飼育されている牛を食べるということは最上のご馳走であり、貴族としてのステータスでもあったのでしょう。
もちろん庶民的な料理もあります。「リボッリータ」と呼ばれる野菜のスープは、「リ=再び」、「ボッリータ=煮る」と呼ばれる名前の通り煮返せば煮返すほど美味しくなると言われています。
トスカーナ州シエナ地方のパスタとして「ピチ」があります。ピチの原料は小麦粉、塩、オリーヴオイルとシンプルで、見た目は太いスパゲッティのようですが、食感は日本のうどんに近いものとなります。
チーズでいえば「ペコリーノ・トスカーノ」が挙げられます。ペコリーノは中南部で羊の乳から造られるチーズで、トスカーナ以外にも多くの州で生産されています。
熟成期間はテーブルチーズとして最低5ヶ月、料理用になると最低8ヶ月。塩味が強く、若いものにはピリッとした辛味があり、熟成するにつれてその辛味が増し、風味も強くなっていきます。昔は保存のために塩を多く使用していましたが、衛生環境の向上から現在は減塩の傾向にあります。
トスカーナ州のワイン
それでは、どのようなブドウ品種が栽培され、どのような銘柄があるのでしょうか?
主なブドウ品種
白ブドウ
Vernaccia di San Gimignano(ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ):
ヴェルナッチャは「地品種」を意味する単語。塔の街サン・ジミニャーノ周辺で主に栽培されます。繊細な果実味にしっかりとした酸味があり、中程度のボディとなります。
Trebbiano Toscano(トレッビアーノ・トスカーノ):
Trebbianoはイタリアのほぼ全域で生産されているブドウ品種。質よりも量を求められた1960年代に植樹されました。フレッシュな早飲みタイプのワインが造られます。
黒ブドウ
Sangiovese(サンジョヴェーゼ):
イタリア中部を代表する品種。非常に多くのクローンが存在しており、呼び方も地方により様々。色調は鮮やかなルビー色をしており、スミレやチェリーの香り。しっかりとした酸とタンニンあり、早飲み〜熟成向きまで幅広いタイプが造られます。
Canaiolo Nero(カナイオーロ・ネーロ):
主にSangioveseのブレンドに用いられることが多い品種。晩熟型で色素量が多く、果実味に富んでいます。
主なD.O.P.ワイン
Brunello di Montalcino(ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ):
Sangiovese100%で造られるトスカーナ州を代表する偉大な赤ワイン。長い熟成期間を経てリリースされ、その後も数十年の熟成能力を有するものもあります。クラシックな造りでは大樽で熟成させますが、近年では小樽を用いる生産者も増えてきています。
Chianti Classico(キアンティ・クラッシコ):
Sangiovese80%以上の使用が義務付けられています。伝統的にChiantiを造っていたフィレンツェとシエナの間の丘陵地帯で生産されるため「Classico」の表記が付記されます。香り豊かでしっかりとした酸を持つ優美な赤ワイン。上位カテゴリーとして「Reserva」、「Gran Selezione」が定められています。
Vernaccia di San Gimignano(ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ):
Vernaccia di San Gimignano主体で造られるトスカーナ州唯一の白ワインD.O.C.G.です。13世紀には歴史に登場する古くから知られる銘柄。フレッシュでシンプルなスタイルが多いですが、樽熟成させた複雑なタイプのものも造られます。
Bolgheri(ボルゲリ):
今回の中では唯一のD.O.C.です。古くは白やロゼの産地でしたが、サッシカイアの成功により国際品種の産地として注目が集まり、有名生産者がぞくぞくと進出してきています。Bolgheri Sassicaia D.O.C.はイタリアで唯一単独呼称を持つワインです。
まとめ
いかがでしたか?トスカーナ州の料理とワインについて記載させていただきました。
まとめてみますと
- 昔から高度な芸術・文化を有し、世界遺産も数多く登録されている
- 丘陵部が多く、様々な土壌構成をもち、内陸部は大陸性気候だが、海沿いは地中海性気候になる
- 貴族の料理発祥の地でもあり、豊かな食が目に留まりやすい
- Sangioveseから造られる赤ワインの銘酒が揃う
トスカーナ州は自由な発想のもと、イタリアワインのトレンドを牽引している州です。その枠に収まらないスタイルから格下のカテゴリーでワインを市場に出すことも少なくはありません。D.O.P.ワインに比べると価格は控えめですが、その品質の高さから目を見張るものも多くあります。是非この機会に一度試されてみてはいかがでしょうか?
ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。
飲兵衛薬剤師
2023年、ワインエキスパート取得
好きだった番組は「料理の鉄人」と「どっちの料理ショー」
坂井シェフが憧れの人
コメント
こんにちは、楽しく拝読させて頂いております。
イタリア・トスカーナ州・・・フィレンツェ、シエナ、サンジミニアーノ・・・学生時代に訪れたところです。とても懐かしく思い出します。建築学科の学生だったので、当時は建築を学ぶ旅と称して巡っておりましたが(笑、実はほぼ観光?)、その頃にこんなワインの知識があったなら、旅の楽しさや思い出は倍増以上だったろうな~と思います。
Bolgheri Sassicaia D.O.C.、イタリアで唯一、単一ワイナリーに与えられた呼称ですね。スーパータスカン、なかなか手が出せないですがいつか頂いてみたいです。(^^)/
Sherryさん、ありがとうございます。
ワインの知識があると、旅の楽しさはガラリと変わりますよね。
私も以前イタリアを訪れた時は全くの無知でした( ; ; )
Sassicaiaは夢ですね。いつか巡り会える日を願って。