こんにちは。わいんとくすりです。
赤ワインの銘醸地、トスカーナ州のヴィンテージ情報を「キャンティ・クラシコ」、「ボルゲリ」、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」の3つの銘醸エリアに分けて2014年ヴィンテージを見ていきたいと思います。
トスカーナ州の2014年は異常気象に見舞われた激動の1年です。どの銘柄もいくつもの困難を乗り越えてリリースされたワインたちです。それはどのようなものだったのでしょうか?
それではさっそく2014年のヴィンテージ情報をみていきましょう。
評価の指標は有名な評価サイトWINE ADVOCATES(以下、WA)とWINE SPECTATOR(以下、WS)の点数を引用させていただきました。
キャンティ・クラシコ2014|WA:88R WS:88

キャンティ・クラシコ2014の特徴は激しい気候変動と頻回の雨にさらされ、育成期の平均気温が例年を下回った厳しい年です。
冬はとても暖かく、平均気温で5℃程度高くなり、雨も多く降りました。冬場の雨とあたたかな春のおかげで萌芽は早められ、3月末から4月の初旬には多くの蕾がみられます。
初夏は穏やかで、気温は平均的、降水量も例年並みです。
7,8月は例年に比べると涼しく、にわか雨もよく降ったことから、光合成不足や真菌感染が懸念されました。生産者は被害を最小限に抑えるため、葉の管理や間引きを入念に行い、日当たりや風通しの確保に多くの労力を費やしてます。
8月末の時点ではブドウの熟度は低く、酸度も高めでしたが、9月から10月にかけて巻き返していきます。昼暑く夜寒いという好条件が続いたおかげで徐々にブドウは成熟に向かいます。
ブドウの収穫は10月半ばから開始されました。例年は9月20日頃から始まることから、1ヶ月程度の遅れがあります。ただし、気候がよく、成熟を待つことが出来たブドウには豊かな芳香と豊富な酸が蓄えられています。
仕上がったワインは色素がしっかりと抽出され、濃いルビーの色調があり、充実した果実味にエレガントな酸となめらかなタンニンのバランスがよく、10年経った今がちょうど飲み頃のワインとなっています。
育成期のさまざまな気候変動、病害の管理を含め、困難な年であったにもかかわらず、キャンティ・クラシコ2014の生産量は質・量ともに申し分ない出来となっています。
ボルゲリ2014|WA:86E WS:89

ボルゲリ2014の特徴もキャンティ・クラシコ同様にめまぐるしく変化した気候が特徴です。
あたたかな雨が降る冬の後、穏やかで乾燥した春が訪れます。ブドウ樹の発育は申し分なく、予定通り順調に進みます。
開花・結実に問題はなく、栄養が蓄えられていきました。ところが、7月末から8月にかけて雨が多く、気温も低めで推移したことにより、ブドウの成熟が遅れてしまいます。
そこに加えてキャンティ・クラシコ同様にカビの感染が懸念されます。ブドウの管理は同様に日光や風通しを確保するためにブドウ樹の管理を細心の注意を払って行われます。
9,10月の天候には恵まれ、晴天と乾燥した成熟に最適な日々が続きます。
収穫期間が長く、ゆっくりと行われたことがこの年の最大の特徴です。早熟とされるメルローが9月の上旬から収穫が始まりますが、ブドウの成熟を待ちながら行われたため、収穫の終了が10月末までと異例の長さになります。
収穫を待つことができたおかげでブドウは完全に成熟をすることができ、豊かなアロマと酸、凝縮した果実味を備えることができました。
仕上がったワインはフレッシュで生き生きとしたワインとされていますが、上級レンジは熟度と複雑性を楽しむことが出来るとも評価されています。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ2014|WA:87E WS:89

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの2014も他と同様に雨と日照不足に悩まされた年です。ブドウの出来の悪さから、格を下げた生産者も多くいたようです。Reservaに至ってはほとんど見つけることができませんでした。
あたたかく雨の多い春はブドウ樹の発達を促し、順調に生育を続けます。
7月から8月にかけての気候はキャンティ・クラシコ、ボルゲリ同様に冷涼で雨の多い異常気象が特徴です。そのため、ブドウ樹の管理や病気への注意などに慎重であったことも想像に難しくありません。
収穫期の気候は晴天が続き、昼夜の寒暖差もあったことから、成熟を待っての収穫が行われています。
ワインによっては厳しい気候条件から、必ずしもバランスはとれておらず、熟成にはあまり適さないと評価されることもあるようです。
Consorzio del Vino Brunello di Montalcinoの評価でも☆5つ中の☆3つと厳しい評価がされていることからも最高のヴィンテージとは言い難いですね。
まとめ
いかがでしたか?今回はトスカーナワイン2014ヴィンテージを記載させていただきました。
まとめてみますと
- 降雨量も多く、寒かったため、ブドウの成熟が難しかった
- ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは格下げを行った生産者もいる
- 難しい栽培であったにも関わらず、醸造の工夫もあり、評価は高め。長期熟成は不向き。
2014ヴィンテージは市場ではあまり見かけることはないかと思います。ヴィンテージチャートからみると評価はいまいちだし、買うのはちょっと・・・と思われるかもしれませんが、ちょうど10年程度の熟成を経ており、トップレンジのワインは今が飲み頃です。
熟成ワインとなると保管状況も気になるところですが、信頼できるワインショップにあるものなら試してみると面白い発見があるかもしれませんよ。
ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

薬剤師/2023ワインエキスパート/イタリアワイン好き/寅年
とあるワインバーでワインのセミナーを聞き、ワインを学習の対象として見るようになりました。さらに体系的な勉強がしたいと思い、2022年にワイン検定ブロンズ、シルバー、2023年にJSAワインエキスパートを取得。このブログでは試験で得られないイタリアワインの面白さをお届けしていきます。
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