こんにちは。わいんとくすりです。
イタリアのワイン産地を巡っていきます。今回はウンブリア州の料理やワインについてみていきたいと思います。
ウンブリア州の知名度は高くはありませんが、品質の高いデイリーワインを各地で生産している穴場的な生産地域です。知らない方は手にする機会もそんなに多くはないと思います。
今回の記事を読んでいただければ、ウンブリア州の郷土料理やワインの特徴について理解が進むと思います。是非ご一読ください。
お断りになりますが、総論の記事ですので、個別のD.O.C.G.やD.O.C.の詳細な記述については避けさていただきます。今後詳しくみていこうと考えていますので、今回はご容赦願います
ウンブリア州概論
ウンブリア州はイタリア半島中央部に位置しており、東はマルケ州、北西にトスカーナ州、南はラッツィオ州と接しています。地図をご覧いただければお分かりのように、海に面していないことが大きな特徴です。
州都はエトルリア起源をもつ丘の上の美しい街ペルージャです。
イタリアの州の中では小さい方ですが、湖や川に恵まれており、水源は豊富です。州土の70%を占める緑の丘陵地帯が美しく、イタリアの「緑の心臓」と呼ばれ、褒め称えられています。
その神秘的な美しい自然を有するからか、多くの修道院があります。有名なベネディクト修道会の創設者ベネディクトゥスはウンブリアの生まれです。
中世紀から近世にかけてはローマ教皇領に属しており、聖フランチェスコの街アッシジは現在でもイタリア国内において、ローマに次ぐ重要な巡礼地のひとつとして位置付けられています。
ワインと宗教は切っても切り離せない関係を持っています。ウンブリア州のワインは礼拝などでも使用され、重要な位置づけにあったことは想像に難しくありません。
気候・風土
州の東側をアペニン山脈が南北に走り、中央部をテヴェレ川が流れます。大小の川が多く流れており、豊かな水源を有します。北部にはイタリアで4番目に大きいトラジメーノ湖もあります。
気候は地域によって異なりますが、主に亜地中海性気候、亜大陸性気候です。夏は乾燥して暑いですが、川や湖の影響で適度の風が吹きます。
丘陵地帯は石灰質土壌が多く、ブドウ栽培に適しています。トスカーナ州にまたがるオルヴィエート周辺では火山性土壌も混ざってきます。
ウンブリア州の料理

それではウンブリア州の食材・料理を見ていきましょう。
森の中にポツンとある街ノルチャは豚肉加工人ノルチーノの語源となった地。加工肉だけでなくトリュフの産地としても有名です。
このトリュフを使った料理として「フリッタータ・ディ・トリュフ」や「スパゲッティ・コン・イル・タルトゥーフォ・ネーロ」があります。フリッタータはオムレツのような料理です。これらの料理はトリュフの香りを存分に楽しめます。
ウンブリア州はスペルト小麦も有名で、こちらを使った料理が「ミネストラ・ディ・ファッロ」です。ファッロはスペルト小麦を指し、薄い皮が特徴です。ミネストラ(スープ)にすることで粒のまま食べることができ、プチプチとした食感が楽しめます。
ノルチャ近くのカステッルッチョ村でとれる小さなレンズ豆は「レンティッキエ・ディ・カルテッルッチョ」といわれ、I.G.P.に認定されています。こちらはスープにしたり、煮込み、付け合わせとして幅広く使われています。
チーズは主に羊乳を使用されており、「ペコリーノ ディ ノルチャ」や「ラヴィジョーロ ウンブロ」があります。ラヴィジョーロ ウンブロは山羊乳も使用され、シダの葉に巻かれていることが特徴です。
ウンブリア州のワイン

ウンブリア州は個性的な品種から上質な日常ワインが多く生産されています。どのような品種からワインが造られているのでしょうか?
主なブドウ品種
白ブドウ
Grechetto(グレケット):
ウンブリア州で重要な品種で、ギリシャ起源とされています。皮が厚めで豊かなアロマを持ち、柑橘のテイストとナッティーな印象をワインに与えます。エミリア・ロマーニャ州ではPignoletto:ピニョレットと呼ばれます。
黒ブドウ
Gamay del Trasimeno(ガメイ・デル・トラジメーノ):
フランスのガメイ種とは異なる品種で、サルデーニャ州のカンノナウ同様にグルナッシュ系の品種です。トラジメーノ湖周辺の限られた地域で栽培されています。
Sagrantino(サグランティーノ):
モンテファルコ周辺の限定された地域で栽培されてきた個性的な品種で、ウンブリア州とは切っても切り離せません。ポリフェノールの含有量が多く、色調も濃くリッチな酒質となるため、長期熟成向きのワインが造られます。辛口だけでなく、陰干しの甘口ワインも造られます。

via Wikimedia Commons
主なD.O.P.ワイン
Orvieto(オルヴィエート):
ウンブリア州で最も有名な白ワイン。貴腐による黄金色の甘口ワインとして名声を誇り、教皇庁御用達でもありました。近年は辛口が主流になっています。プロカニコやGrechettoから造られるシンプルで優しい味わいの白ワインで根強い人気があります。
Montefalco Sagrantino
(モンテファルコ・サグランティーノ):
D.O.C.Montefalcoより独立したD.O.C.G.です。ポリフェノール含有量が多く、色素やタンニンの豊かなサグランティーノから長期熟成向きの赤ワインが造られます。その色合いはまさに血のようです。サグランティーノ種は主にペルージャ周辺で栽培され、その起源、由来は教会との関係も深いとされています。

via Wikimedia Commons
Torgiano Rosso Reserva(トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァ):
エトルリア時代にはすでに存在したといわれる街トルジャーノ。その丘陵地帯で造られるSangioveseを主体とした赤ワインはふくよかで深みのある味わいを持ち、複雑かつ優美。トスカーナとは違った魅力があります。
まとめ
いかがでしたか?今回はウンブリア州について記載いたしました。
まとめてみますと
- 風光明媚で多くの修道会があり、「緑の心臓」と讃えられる
- 豚肉の加工品や黒トリュフの産地として有名
- 高品質なデイリーワインから長期熟成可能でパワフルなSagrantinoの産地
修道会の街として栄えたウンブリア州ですが、有名なD.O.P.ワイン銘柄は多くはありません。D.O.P.ワインの安定した美味しさも良いですが、地酒の区分であるI.G.P.ワインにも面白いワインが多くある生産地域です。お見かけした際にはぜひ一度手に取ってみてください。
ここまでご一読いただきありがとうございました。また次回の記事でお目にかかりましょう。

薬剤師/2023ワインエキスパート/イタリアワイン好き/寅年
とあるワインバーでワインのセミナーを聞き、ワインを学習の対象として見るようになりました。さらに体系的な勉強がしたいと思い、2022年にワイン検定ブロンズ、シルバー、2023年にJSAワインエキスパートを取得。このブログでは試験で得られないイタリアワインの面白さをお届けしていきます。
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